『宗像教授異考録』第2集
星野之宣 小学館 \1,238+税
7月7日は、ご存じ七夕の日だ。
七夕は日本独自の行事ではなく、その発祥は中国である。それゆえ中国文化の影響を強く受けた東アジア全域(中国、台湾、韓国、ベトナムなど)で行われるが、それぞれ土着の民間伝承と結びついているので、国や地域によって物語や行事の形態が微妙に異なる。
そんな七夕伝説のルーツに迫るのが、星野之宣『宗像教授異考録』だ。
主人公の宗像伝奇(むなかた・ただくす)は民俗学の教授であり、各地の民間伝承と史実を組み合わせ、毎回壮大な「仮説」を披露する。
宗像教授が主人公の作品には『宗像教授伝奇考』とその続編である本作『宗像教授異考録』が存在するが、基本的には1話完結型スタイル(長くても1エピソードが3~4話分)なので、どの巻からでも楽しめるのがうれしい。
七夕伝説を扱っているのは、『宗像教授異考録』第2集に収録されている「織女と牽牛」である。
七夕伝説のルーツを探る思索は、古代日本と古代中国はおろか、なんと古代ギリシアにまで及ぶ。牽牛とミノタウロスの関連性についての「仮説」は、そのスケールの壮大さに舌を巻くこと必至だ。
秦氏、アマテラスとスサノオ、ミノス王、アリアドネなど縦横無尽に繰り広げられる博覧強記の宗像ワールドは、ロマンチックな七夕の夜にこそふさわしい。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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