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『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』第5巻 きゆづきさとこ 【日刊マンガガイド】

2015/07/22


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『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』第5巻
きゆづきさとこ 芳文社 \819+税
(2015年6月27日発売)


プロの同業者からリスペクトを受けるタイプの音楽家をミュージシャンズ・ミュージシャンと呼ぶことがある。
同様のことをマンガの世界で考えてみれば、これまた人により様々な作家名が挙がるはずだが、そこに「まんがタイムきららキャラット」連載でアニメ化もされた『GA 芸術家アートデザインクラス』、そして「まんがタイムきらら」2005年1月号での連載開始から10周年を迎えた『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』で知られるきゆづきさとこの名を加えることをためらう必要はないだろう。

魔女の呪いで、体が黒いシミに侵食されつつある、棺を背負い黒ずくめの服に身を包んだ女の子・クロと、1000匹のコウモリに分断された元「センセイ」のセンは、呪いを解くため魔女を探す旅をしている。
その道中で出会った、猫耳としっぽを持つ双子の「じっけんたい」であり、自分たちを造った「はかせ」を探したいという少女・ニジュクとサンジュを加えて旅をつづける4人(ないし3人と1000匹)は、少しずつ魔女・ヒフミの謎に近づいていくのだが――。

『キノの旅』が引き合いに出されることも多いファンタジックな世界観を彩るように、連載・単行本ともにコマ枠外が黒色で塗りつぶされ、カラーページも豊富に(単行本向けの加筆も多分に)盛りこまれた本作の感触は、まるで絵本か童話だ。
物語的にライトなものと思われがちで、決めの大ゴマが使えない4コマという形式のなかで、いかにして壮大なファンタジーが可能になるのか――それを圧倒的な画力と情報密度、そして叙情とユーモアで語りきるという、萌え4コマならばすべてが許される「きらら」という土壌ゆえに花開かれた4コマのルネサンス、愛らしい奇跡の「じっけんたい」。

もはや本作は、童話風4コマというよりはむしろ、「4コマ童話」と見なすべき地平で綴られている。

物語の世界観やキャラクターたちの過去、魔女・ヒフミの秘密が少しずつ照らされていくなか、この第5巻では絵の師匠のエピソードや、クロが手袋をつけるエピソードなど、物語の完結(後)を匂わせる、未来の語りまでが現れはじめた。
いよいよ物語は、その探していた「死」を見つけ出すことになるのだろうか。



<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」

単行本情報

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