『ブルー・サムシング』
谷川史子 集英社 ¥419+税
(2015年7月24日発売)
谷川作品を読んでいると、大人のための少女マンガはこれほど成熟したものになったのだな、と感動すら覚えてしまう。
読み切り作品5編のヒロインたちはどこにでもいそうな女性像にして、彼女たちが直面する“事件”や心のモヤモヤは十人十色。
それぞれの状況と感情が流れるように描かれ、いつしか主人公の気持ちに寄り添いながらドラマに引きこまれている……こうした手腕は『おひとり様物語』などでもおなじみだ。
表題作の「ブルー・サムシング」の主人公・一花は、バツイチの35歳。
離婚した元夫が再婚の報告をしてきたり、愛する人がいるくせに「一花は俺の大切な人」なんて臆面もなく言ってのける無邪気さにイライラするのだが……。
大好きな人との恋が叶っても、別れても、その先には長い人生がある。「王子様と結ばれる幸せの絶頂」にはない幸せのかたちもある。
たとえ主人公が納得のいかない感情に苦しんでも……自分や相手の気持ちを振り返りながら出口を見つけていける谷川作品は、“ハッピーエンド”の定義を広げているといえるだろう。
「Cocohana」9月号よりスタートしたシリーズ連載『はじめてのひと』にも、ぜひ注目を。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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