『少女漫画』
松田奈緒子 集英社 ¥838+税
「子供の頃は オスカルの妖しさ 美しさに 大人になれば 史実と虚構を有り得ない程の精度でドラマ化していく作者の力量に総毛立つ。」。
これはあるブログで語られた『ベルサイユのばら』(池田理代子)の書評なのだが、共感する人も多いのでは?
本日8月29日は、そんな『ベルサイユのばら』の記念日。1974年、同作をミュージカル化した宝塚歌劇団による『ベルサイユのばら』が初めて上演された日で、それにちなんで“ベルばらの日”となっている。
さて、冒頭の書評を書いたのは、三沢勝子という34歳の女性。
松田奈緒子が、数々の名作少女マンガをモチーフに描いた連作『少女漫画』第1夜のヒロインだ。
もちろんこの第1夜でモチーフは、『ベルサイユのばら』。マンガ中毒の勝子が、マンガのなかでも一番好きなのが“ベルばら”で、同作を読み返す時が彼女の至福のひと時となっている。
派遣社員として働く彼女だが、勤める会社は環境も待遇も最悪。そんななか、同僚に「三沢さん オスカルの心 持ってるよ」と言われた勝子は、自分も革命を起こそうと立ち上がる……。
読めば、モチーフとなっている“ベルばら”の魅力にも浸れて、少女マンガ、そしてマンガそのものの魅力に気づかせてくれるのが『少女漫画』。
人生において、マンガのキャラクターやセリフが後押ししてくれて、その物語や余韻がどれだけ豊かにしてきてくれたか、自分事として再確認できるはずだ。
“ベルばら”を読み返したくなることも必至!
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が発売中。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。