『重版出来!』第4巻
松田奈緒子 小学館 \522+税
(2014年9月30日発売)
弊社刊『このマンガがすごい!2014』をはじめ、さまざまなランキングや賞などで絶大な支持を集めた『重版出来!』も、はや4巻に突入。
マンガ雑誌の新人編集者・黒沢の目を通して、マンガ業界の知られざる内情、マンガが出版物として読者の手に届くまでの現場のアレコレを、臨場感たっぷりに伝える「ギョーカイもの」という基本路線はそのままに、4巻ではさらに「デビューを目指す新人作家」にスポットを絞って物語が展開される。
企画ものデビューでチャンスを手にしたものの、締め切り、クライアントの要望など「プロの仕事」と「自己表現」をめぐる葛藤やプレッシャーに悩む者。長年、アシスタントをしながらデビューを目指していたはずが「俺はプロになるのが、本気で闘うのが怖かったんだ」と気づき、夢に決着をつける者。
新人作家の歩む道のりも様々なら、それを支える編集者もまた様々。黒沢のような熱血派もいれば、要領よく結果を出すことを重視し、なんのサポートもせず「この程度のこと乗り越えられないようじゃ、早々に潰れたほうが本人にとっても幸せだよ」とのたまう、安井のような者もいる。
そんな彼の意外な過去エピソードには、人にとっての仕事の意味を、しみじみ考えさせられずにはいられない!
編集者かくあるべし――といったルールや正解なんかない。なにがよくてなにが悪いでもなくて、ただいろんな考え方のもと、いろんなスタンスで働く人がいて、初めて仕事は、社会は回っているのだ――と気付けば、自分を取り巻く風景がほんのちょっと変わって見えてくるはず。
「ワーク・ライフ・バランス」なんて言葉がもてはやされる今だからこそ、すべての働く人、まだまだ必読ですゾ!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69