手塚治虫が華々しく活躍した昭和30年代。同じマンガ業界に、手塚にライバル心を剥き出しにする漫画家がいた。彼の名は海徳光市。なにを隠そう、彼は大の手塚マニアだった! 海徳氏の目を通し、手塚治虫の実像を追跡(チェイス)する異色作品。今回は、そんな『チェイサー』をチェイスする!
後編はコチラ!
【インタビュー】おれが一番、手塚のすごさをわかっているっ! 『チェイサー』コージィ城倉【後編】
17位という順位に「頭、来んだよね」!
――先生、「フリースタイル[注1]」VOL.25(フリースタイル社)の記事拝見しました。
城倉 あ、読んじゃった?
――「このマンガを読め!」10位獲得のコメントで「『このマンガがすごい!』の方でも順位低かったしィ~。頭、来んだよね(自分自身に…)」と。まずはその真意をおうかがいしましょうか。
城倉 うはははは。いや、ぶっちゃけね、「『チェイサー』は上の順位、狙えるでぇ」って期待してたの(笑)。
――先生の作品ですと、原作を担当[注2]した『グラゼニ』が「このマンガがすごい! 2012」オトコ編で2位になっているじゃないですか。
城倉 そうだけど、「マンガ読み」と言われるような読者には『チェイサー』はもっとウケると思ってたんだよ。
――単行本が1集しか出ていない段階でランクイン(17位)するのは珍しいですよ。
城倉 10月発売だと載せてもらえないと思ったから「せめて9月中に出そうよ」って編集部に話して1冊目を出したの(笑)。
――そうです、本誌は前年10月1日から、その年の9月30日に単行本が発売された作品がアンケート集計対象になります。そこまで本誌を意識してくださって光栄です。
城倉 うん、これは若干ヤらしい話だけど、1位になると宣伝効果がすごいじゃない。だから、そういう部分での露出を計算に入れて描いている作家や編集者は、ぶっちゃけ多いと思います。これが大部数発行の少年マンガ誌に連載しているんだったら話は別で、そこまで気にする必要はないと思うんだよね。だけど『チェイサー』は青年誌の「ビッグコミックスペリオール」で、しかも2カ月に一度の連載だから。やっぱり好きで描いているモノだからセールス的にウケたいし。だからね、すごく意識してたの。
- 注1 株式会社フリースタイルの発行するカルチャー雑誌。季刊。年に1回「このマンガを 読め!」というマンガのランキング企画を実施している。『チェイサー』は「THE BEST MANGA 2014 このマンガを読め!」にて 第10位にランクインした。
- 注2 コージィ城倉先生の漫画原作者としてのペンネームは「森高夕次」。『おさなづま』(作 画:あきやまひでき)、『ショー☆バン』 (作画:松島幸太朗)、『グラゼニ』(作 画:アダチケイジ)などが代表作。ちなみに梶原一騎の別ペンネームに「高森朝雄」(『あしたのジョー』などでの名義)があ り、「森高夕次」はそこから由来する。