『シンデレラの靴、あります。』第2巻
藤井明美 集英社 \440+税
(2014年10月24日発売)
それは会社をクビになった帰り道。すっぽ抜けたパンプスが勢いよく飛んでいって男性の頭を直撃……そんなことから始まる恋もある!?
彼は怒るどころか、脱げたパンプスに手際よく詰め物をし、あっけにとられる彼女の前から去っていく。まるで『シンデレラ』の逆を行くような“王子様”の正体は、シューフィッター(足の健康と靴との専門家)だったのだ。
主人公・羽鳥つばさは後日、偶然かけこんだ靴屋でくだんの王子様・柿島と再会。靴屋の店長で柿島の先輩でもある沓野谷(くつのや)に気に入られ、とんとん拍子で雇ってもらえることに。
お客さん一人ひとりにていねいに靴をフィッティングする柿島の仕事ぶりに見惚れ、つばさは新しい仕事に意欲を持ちはじめる。
そして、柿島への想いが沸点に達するのにも時間はかからなかった。
しかし、柿島がシューフィッターの仕事に心血を注ぐのには悲しい理由があった。
柿島の妹は高校生のとき、沓野谷とのデート中に交通事故で命を落としていた。そして、その原因は自分のプレゼントした足に合わないパンプスにあると、己を責め続けているのだ。
しかも、つばさの声は、柿島の亡き妹にそっくりなのだという。自分の存在は柿島を苦しめていると知るつばさ。柿島に、いつまでも過去にとらわれてほしくないと望む沓野谷。
ところが柿島は「店を辞める」とまで言い出して……。
こんな王子様をモノにするには、シンデレラのほうから前のめりにいくしかない!
まっすぐに気持ちを伝えようと奮戦するつばさを応援せずにいられない、ピュアな恋物語だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」