『王国の子』第4巻
びっけ 講談社 \627
(2014年6月6日発売)
王女と容姿がそっくりの少年が女装をして影武者を務める……。
舞台のモデルが、エリザベス一世が即位する十年ほど前のイングランドということもあって、本作からは、マーク・トウェインの入れ替え劇『王子と乞食』を連想するかもしれない。
だが、『王子と乞食』のように幸せな結末に向かうほど、『王国の子』は甘くない。影武者に求められるシビアな役割と襲い来る悲惨な運命……。
だからこそ、王族と影武者、ふたりの絆がより際立つ。
実際の歴史を下敷きにしている本作。4巻は、英国王室史でも屈指の悲劇「九日女王」事件がモチーフだろう。
傀儡として、望まない女王に即位した少女ジェイン・グレイ。彼女は、亡き少年王エドワードの影武者であったジョンとともに逃げる……。
フィクションとノンフィクションとを絶妙に混ぜ合わせ、激動の時代の裏に流れる人間の苦悩を掬い取る。
「そう彩色してきたか!」と、歴史好きにはたまらない。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「SFマガジン」でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
The Difference Engine