365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月8日は木の日。本日読むべきマンガは……。
『集英社文庫 妖怪ハンター 天の巻』
諸星大二郎 集英社 ¥638+税
10月8日は「木の日」という記念日。
これは日本木材青壮年団体連合会が1977(昭和52)年に提唱したもので、由来は「十」と「八」を組み合わせれば「木」になるから……とまぁ、そこは様々な記念日にありがちなこじつけもご愛嬌という感じなのだが、「あらためて木のよさを見直す日」という記念日の意義についてはおおいに賛同したいところ。
そんなわけで、今日はあらためてマンガに登場する「木」に注目してみたい。
たとえば、藤子不二雄Aの超名作『まんが道』では「なろう! なろう! あすなろう! 明日は檜になろう!」という井上靖の『あすなろ物語』の一節がたびたび登場していたことが印象深い。
ここで「木」は、いわば目標に向かって成長していくことの象徴として登場しているわけだが、幕末を舞台とした手塚治虫の『陽だまりの樹』では、見た目は立派だけど中身は虫食いだらけになっている「木」が、当時の幕府を揶揄するものとして描かれている。
ほかにも、ときには神聖なるものの象徴であったり、あるいは大地の生命力のシンボルであったりと、様々な意味合いで「木」が登場する作品は多いのだが、なかでも「樹木の神秘性」をテーマとする作品といえば、諸星大二郎を忘れるわけにはいかないだろう。
諸星大二郎で「木」といえば、『妖怪ハンター』シリーズの一作である「生命の木」をまず思い出す人も多いかもしれない。
しかし、「おらといっしょに ぱらいそさ いくだ!!」というセリフがやたら有名なこの物語、じつは「木」そのものに関して言えば、それほど直接的に内容と関係があるわけではない。
それよりも今回オススメしておきたいのは、同じく『妖怪ハンター』の作品である「花咲爺論序説」に始まる、一連の「木への信仰」にまつわるエピソードだ。
妖怪ハンターこと稗田礼二郎が、各地に「おとぎ話」や「わらべうた」の形で残された伝承をたどって、「生命の木」の存在に迫っていくことになる「幻の木」、「川上より来たりて」そして「天孫降臨」の三部作は、描かれた時期にはかなり開きがあるのだが、ありがたいことに『妖怪ハンター 天の巻』という文庫サイズ単行本に読みやすくまとめられている。
まぁ、詳しい内容に関しては、諸星大二郎独特のタッチでぜひゾクゾクしながら読んでいただきたいということで、あえてここでは語りませんが、さすがにこれほどガッツリと「木」に関するエピソードが詰まった単行本はなかなかないと思うので、「木の日」に読むにはふさわしいんじゃないでしょうか。
ただし、おいそれと材木にするわけにはいかないような木しか出てきませんけどね。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。