日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ジークンドー』
『ジークンドー G=ヒコロウ×雑君保プ×道満晴明競作集』
道満晴明/G=ヒコロウ/雑君保プ 一迅社 ¥900+税
(2015年9月26日発売)
90年代、実戦派ライターたちによる専門的な記事を掲載し、ほかの追随を許さないゲーム情報誌「ゲーメスト」で一世を風靡。対戦格闘ゲーム(=格ゲー)ブームを担う一翼として存在感を放ち続けた出版社があった。新声社である。
じつはこの新声社、ゲーム情報誌以外にも、月刊マンガ誌「コミックゲーメスト」や、様々な格ゲーアンソロジーコミックスなどを出版したマンガ出版社としての面も持っていたのはご存じだろうか。
マンガ出版社としては比較的歴史が浅かったことや、格ゲーという新興文化を題材にしていたためか、誌面には先鋭的な新人作家が多く集まっていたが、そのなかでもことさら異彩を放つセンスによって当時から注目されていた作家がG=ヒコロウ、雑君保プ、道満晴明の3名だ。
コミカルにディフォルメされた絵柄、独特のテンポで展開されるコメディチックな作風を武器とし、マンガ界に独自の地位を築いていた彼らは、2006年に合同サークル「ジークンドー(※サークル名は各人の名前から一文字ずつ取ったもの)」を結成すると、毎年のように同人誌即売会で作品を発表していった。
『ジークンドー G=ヒコロウ×雑君保プ×道満晴明競作集』は、そんなジークンドー作品を商業単行本として一冊にまとめた本である。
つど提示されるテーマに沿って短編競作をおこなう形式となっており、前述のとおり作家性にある種の共通項が感じられる三者だが、一冊を通読してみると、その視点や表現方法はまさに三者三様。
決して一本調子に陥ることなく、驚くほどバラエティに富んだ仕上がりとなっているのがうれしい。
また、本作は2006年から2013年までの作品をまとめたものであり、直近の2作品は収録されていないため、本サークルにさらなる興味を持った方は、ぜひとも同人誌即売会まで足を運んでみてほしい。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。