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『アニメタ!』第1巻 花村ヤソ 【日刊マンガガイド】

2016/02/02


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『アニメタ!』


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『アニメタ!』第1巻
花村ヤソ 講談社 ¥570+税
(2015年12月22日発売)


TVアニメ『SHIROBAKO』の影響か、アニメの制作現場に注目したエンターテインメント作品が、様々なジャンルから登場した。
しかし残念ながら、その大半は、アニメに多少なりとも詳しい人を納得させるだけのクオリティを持ちえていないものも少なくなかった。

そんななか、本作は描写のたしかさ、題材への誠実な切りこみ方で、注目に値する一作だ。

主人公の真田幸は19歳。特に目標を持たず、からっぽで過ごしていた女子高生時代に、偶然出会ったアニメ『王立少女パンナコッタ』に心奪われ、アニメーターの道を志した。

もともとオタクだったわけではないので、アニメの制作に関する知識はほとんどなく、絵の技術や才能もあるわけではない。
あるのは「アニメに命をかける覚悟」だけ。
そんな彼女だったが、業界でも五指に入る大手制作会社・N2 FACTORY STUDIOに、動画マンとして採用される。

「動画」というセクションはしばしば、アニメーターとしてもっとも格下のセクションであり、新人があくまで下積み期間にやる仕事のように語られる。
そうした面がまったくないわけではないが、動画の質は作品の出来をダイレクトに左右するものであり、特に劇場で掛かるようなアニメを作るうえでは、1ミリ単位の誤差も許さないすさまじい精度の仕事が要求される。

そうした「動画」という仕事の重要性、難しさが、ずぶの素人である主人公の目線で、実感を持って、説得力のある形で物語られる。
そうした仕事内容に関する描写もさることながら、アニメーション制作会社の「あるある」ネタも、青年誌の作品らしいしっかりとしたリサーチを背後に感じさせる描き方がなされている。

「所属しているアニメーターはいるが、いちばん難しいパートはフリーの凄腕アニメーターに外注している」とか、「大学のアニメーション研究会で自主制作をしていた新人は生意気」とか、「新人アニメーターの収入は激安」だとか、きれいごとではない部分にもしっかりと、嫌味ではない形で踏みこんでいる点も含めて、好感が持てる。

そのうえで、幸が語るアニメへの愛が、心底まっすぐなのが、とてもいい。胸を打たれる。

第1巻の時点では、まだまだアニメーターとしてよちよち歩きすらままならない感じの幸だが、ここからどう成長し、その過程で、どんなものを目にしていくのか。楽しみに追いかけたい。

アニメが好きな人、そして、アニメを作る人たちが好きな人は、ぜひごいっしょに。



<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei

単行本情報

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