『さべちん』
SABE ワニマガジン社 1,512
1844年7月3日は、北大西洋や北極海に生息していたオオウミガラスが、乱獲によって絶滅してしまった日。
この海鳥、一見するとペンギンに似た姿形だと思ってしまうが、もともと“Pen-gwyn”とは、このオオウミガラスを指す名称だった。一般に知られる「ペンギン」とは、南半球で見つかったオオウミガラス(いわば「本家ペンギン」か)に似ている海鳥のことなのである。
作中にペンギンが多く登場するマンガ……というと、SABE作品が思い浮かぶ。
SABEは、主に成年誌のフィールドで活躍した漫画家だ。「阿佐谷腐れ酢学園」シリーズや『世界の孫』など、成年向け作品以外でも、独特の作風からカルトな人気を博していたが、2009年の1月に41歳の若さで夭逝。
同年9月には、追悼単行本としてワニマガジン社から『さべちん』が発売され、やはり『さべちん』にも、ペンギンが登場する作品が収録されている。
1999年から「月刊コミックフラッパー」で連載していた『串やきP』には、絶滅したオオウミガラスをモデルにした架空の海鳥「海ガラス」も登場。
幻の絶滅種でありながら、謎の少女の手によって「凡庸な存在」であるペンギンの姿へと改造されてしまった串Pこと海ガラスのドズルが、自らのアイデンティティを確立するため、都会に潜む動物たちと夜な夜な戦いを繰り広げる……という、SABEならではのアナーキーなストーリーだ。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。