365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月22日はドリー(クローン羊)の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『放課後のカリスマ』第2巻
スエカネクミコ 小学館 ¥562+税
1997年2月22日、英国・ロスリン研究所に所属するイアン・ウィルムット博士らの研究チームが、世界初の哺乳類の体細胞クローンである雌羊「ドリー」を発表した。
6歳の雌羊の乳腺細胞を別の雌羊の卵細胞に融合させることで1996年7月5日に誕生したドリー。その名の由来はカントリーミュージシャンの「ドリー・パートン」からきている。
ドリー・パートンはホイットニー・ヒューストンの『オールウェイズ・ラヴ・ユー』(=映画『ボディガード』のアレ)やオリビア・ニュートン=ジョンの『ジョリーン』のオリジナルシンガーでも知られるが、なんと言ってもその特徴は、たわわすぎるおっぱいなのである(ご存じない人は今すぐ画像検索を!)。
クローンのもととなる細胞が羊の乳腺細胞……そう、ドリーは“乳つながり”で命名されていたのだ!
閑話休題。
クローン羊ドリーは残念ながら2003年2月14日にヒツジ肺腺腫にかかり安楽死させられる。享年6歳。
くしくも細胞を採取したオリジナルの年齢が6歳だったことから、クローンの寿命については様々な推測・憶測がなされた。ちなみにロスリン研究所はドリーの死亡年とオリジナルの年齢には因果関係がないというスタンスである。
たしかに、クローンはどこまで生きるのか、あるいはオリジナルの生体的情報を超えたクローンはどういう運命をたどるのか、は非常に興味深い。
そんなクローンの人生そのものにスポットを当てた作品がスエカネクミコの『放課後のカリスマ』だ。
西暦2XXX年、遺伝子工学の粋を集めて造られた世界の偉人たちのクローンが集められる「セントクレイオ学園」。
そこに転入したたったひとりのオリジナル・神矢史良(かみや・しろう)はナポレオンや一休、フロイトやエリザベス女王のクローンたちと学園生活を送っていたが、アメリカ大統領選挙に出馬表明をする卒業生・ケネディが暗殺される瞬間を目撃してしまう。
オリジナルと同じ運命をたどったケネディの姿に、自分たちの運命を重ねて恐怖する生徒たち。彼らは羊をかたどったお守り「ドリー様」にすがるようになる。
第2巻の表紙でジャンヌ・ダルク(クローン)が差しだしているのがそのドリー様だ。
火あぶりになる運命にあらがおうとするジャンヌやオリジナルを超えられず苦悩するモーツァルト、地球上のすべてに拒絶されていることを知りながら平穏に生きようとするヒトラーなど、偉人のクローンでありながらいまだ何者でもない彼らの想いと行動は、まるで青春ドラマのよう。
さらに、クローンせん滅をたくらむテロ組織「ストライカー」の存在や、史良の父でクローンの“生みの親”エイトと学園長・黒江のクローンをめぐる策謀など、ミステリー的要素も次々に浮上してきて、全12巻を一気に読ませてくれる。
「全国書店員が選んだおすすめコミック2010」3位入選の実力は、だてではない。
基本的にオススメしたいマンガばかり紹介する「このマンガがすごい!WEB」だが、この機会にぜひ読んでほしいマジでオススメの傑作である。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。「仮面ライダードライブ公式完全読本」やただいま絶賛発売中の「東映ヒーローMAX」もやってます。