日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『女王陛下の補給線』
『女王陛下の補給線』第1巻
カワグチタケシ 講談社 ¥429+税
(2016年3月9日発売)
兵士のために戦う兵士、補給部隊の奮闘を描いた『女王陛下の補給線』。
一見すると軍事マンガだが、これは熱烈スポ根マンガだ。
王国と共和国の戦争が始まって2年。戦地に物資を輸送・配給する補給部隊は「戦わない兵士」とバカにされ、「安全な後方で肥え太る豚」「補給豚」と呼ばれることもあった。二〇二試験補給中隊もそのひとつだ。
酒場で戦車兵と会えば「席を離せ、臭いがうつる」と蔑まれ、軽んじられる。戦わないで後方にいるからと補給部隊の扱いはかなりぞんざいである。
しかし彼らが死線を越え、物資を届けなければ、兵士は戦場でただ死を待つのみ。なすすべもなく犬死にとなってしまう。
物資の到着が大幅に遅れても前線の兵士が死ぬ。物資に不良品が混ざっていても兵士が死ぬ。
補給部隊は後方ながら生命線だ。
その補給部隊を指揮するのが、弱冠14歳にして大学と士官学校を飛び級で卒業したシャーロット・テューダー大尉。そんな彼女には大尉とは別の“王女様”という別の肩書きがある。
そして彼女とともに物資を届けるのがディズ・ノーサイト伍長。ひとりで戦車に太刀打ちできるレベルの強さ。彼に関しては、このマンガのなかで唯一、人間離れした能力を持っていてきわだつ存在だ。
補給部隊、看護婦、兵士、工場。それぞれで働く人々が、悩んだりよろこんだり、ときに文字どおり戦いながら矜持をかけている。その熱い魂を受け取るマンガでもある。
本来なら守られるべき国のトップがみずから戦場へ物資を届ける、それによって国民を守るという設定のからくり。
この仕掛けが物語に本格的に作用し、いよいよおもしろくなるのはこれからだ。
シャーロット王女は、いったいどんな矜持を見せつけてくれるのだろうか。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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