日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『女王様の絵師』
『女王様の絵師』第2巻
私屋カヲル 双葉社 ¥600+税
(2015年11月12日発売)
クラスにいる、2人の女王様。明るいムードメーカーの永瀬サリナと、クールな天才ドS少女・雪森れいか。
クラスにいる、2人の絵師。絵が下手なのに漫画家を目指す少年・藤井真紀と、派遣教師の宮島。
マンガ部を作るため、女王様たちに振りまわされながら、絵師たちはエロマンガを描きはじめる。
宮島は、生徒指導にやる気がなく口が悪い、サラリーマン教員。
彼はマンガ部の顧問を藤井に頼まれるも、最初は断った。
しかし、がむしゃらに漫画家を目指す藤井を見ているうちに、どうしても伝えたいことが生まれはじめる。
そのひとつが、感受性を育てることだった。
宮島は、元エロ漫画家だった。
夢中になって描いていたものがあった。しかし売れなくなった時、焦りが彼を襲った。
自信を失い、自分が何を好きなのか、何に感動したのか、わからなくなってしまった。
エロマンガが描きたい藤井に、宮島は「エロいと感じたこと 全部忘れずメモっとけ」と告げる。
いざ書きだすとなると、難しい。ぼんやりしていた感覚を頭で整理し、形にするのは、たいへん力を使う。
この「気づき」は、マンガを描く際に大事なことだ。
藤井真紀は本当にマンガがドヘタだ。絵は低レベルだし、物語もつくれない。
けれども彼はマンガを描いている。口だけで終わらせない情熱がある。
一方絵はうまくとも、マンガに挫折した経験があり、諦念をかかえる宮島に、雪森れいかは言う。
「あんたはオッサンだけど これからの人生 今が一番若いんじゃない?」
この作品は、高校生3人の青春物語であると同時に、オッサン教師の2度目の青春物語にもなっている。
エロマンガ道と並行して描かれる、ドタバタちょいエロラブコメディがまた楽しい。
藤井を好きで、ぎこちなく誘惑する純愛ギャル永瀬。
永瀬が好きで、手を出そうといろいろ企むレズビアン雪森。
雪森が宮島を、性的対象としてみていないがゆえに、無防備に心を開いている関係も、ちょっと危うい。
読んで「エロい」と感じたところがあったら、ぜひメモってみよう。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」