日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！　今回紹介するのは『惰性67パーセント』。

『惰性67パーセント』第1巻
紙魚丸 集英社 ￥600+税
（2015年8月19日発売）

読んだあと、真っ先に言いたくなる。
なんで君たちセックスしてないの……!?

美大の漫研所属、吉澤みなみ（20）の部屋には、友人のざっくり系女子・北原、もじゃもじゃおとなしい男子・伊東、ゲーム大好き男子・西田が、いつも出入りしている。そして何もしていない。
本当に何もしていない。
吉澤が二日酔いで寝ていて、西田が夢中でゲームをプレイ、北原はタバコを吸い、伊東はくつろいでいる。やることもバラバラ。
一緒にやることといえば、トランプ、鍋、ちゃんぽん飲み。地味です。

ただし起きる事件は、相当にきわどい。
3人が遊びにきている時に目覚めた吉澤は、パンツ履き忘れていることに気づいてあせる。
鍋をこぼして吉澤が着替えようとするも、換えのパンツがなくてたいへんなことになったこともある。
泥酔した吉澤と北原が酔っ払って、上半身真っ裸になったことすらも。
男2人女2人。こんなおいしいエロい状況なのに、この4人の間には、なんにも起きない。

別に性欲がないわけではない。西田は吉澤の下着のことを考えて、興奮している。
何もかも「惰性」。吉澤の家に集まるのにも意味はなく、惰性。かといって集まったメンバーの仲が進展するでもなく、惰性。
ただ、たまにスキー旅行に行く程度には親睦は深めている。だから67％程度。
この男女のバランス感とけだるさが、非常に心地いい。

特に吉澤は、これでもかと痴態をさらし続ける。
男子2人が、それを見ないように恥じらう。純朴にもほどがある。
絶妙なさじ加減で、下ネタと日常ネタのバランスが保たれる。彼らが恋に落ちたりどうこうしてはいけないマンガなのだ。生殺し！

エロマンガで活躍していた作者。「だらしない生活を送る女子」の身体描写へのこだわりは見どころ。
特に吉澤の下腹部。生々しさ100％です。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」