2014年『女の穴』『恋につきもの』と著作が立て続けに実写映画化され、本日7月24日より4カ月連続で単行本が発売の今もっとも勢いのある女性作家のひとり、ふみふみこ先生。今回は『このマンガがすごい!2014』オンナ編にランクインしたふみ先生初の長編『さきくさの咲く頃』について、お話を伺った。
後編はコチラ!
【インタビュー】誰かのこと、もっと知りたいから、マンガを描きつづけてる――。 『さきくさの咲く頃』ふみふみこ【後編】
手探りで煮詰めていった初の長編作
——『さきくさの咲く頃』は、ふみふみこ先生にとって初の連載作、初の長編作だそうですが、どのような経緯で立ち上げたのでしょう?
ふみ 『女の穴』を読んで、担当さんが「『ぽこぽこ』で連載をやりませんか」と声をかけてくださったんですが……振り返ると、本当に担当さんとたくさん話し合って設定をつめながら作っていった作品だなあと思います。
——当初、どんな作品を描いてほしいというリクエストがあったのですか?
ふみ 最初は「アイドルが3人出てくるマンガを描いてください」って。「男の娘のアイドル3人はどうでしょうか」と言ったら、却下されましたね(笑)。
担当 いや、おもしろそうなんですけど……その設定ならもっと生かされる媒体があると思ったので、ほかの雑誌に持って行ってくださいとお願いしまし た
——あ、それが『ぼくらのへんたい』の母体になったわけですね。
ふみ はい、そうです。で、次に「主人公と男女のきょうだいとが三角関係になる」という設定を提案されたんです。あ、そういえば、その前に私が「ババアの百合もの」を提案して……これも却下でしたが。
——ババアの百合もの!? どういうイメージですか?
ふみ 主人公のババアが、相手のお墓の前で「おまえのことずっと好きだったよ」みたいなエンディングになるような……。でも、担当さんが「ババアのマンガはちょっと」……と(笑)。
担当 僕としては、少女マンガらしい少女マンガを描いていただきたいと思っていましたので(笑)。
ふみ これは、初期のキャラ設定のスケッチです。暁生たちのお父さんやお母さんとか、結局登場しなかったですけど……仕事の設定なども考えてましたね。
ふみ 澄花たちの制服のパターンもいっぱい考えました。
——そういうバックグラウンドを考えるうちに、キャラも固まっていくものですか?
ふみ はい。でも、こんなにちゃんと考えたのは『さきくさ』だけですね。
——初の連載ということを意識したためでしょうか。
ふみ それもありますが、担当さんが「考えてください」って言ってくださるタイプだったので。作品をスタートする前にこういう準備をしたことは、あとあとマンガを描くうえですごく役に立ちましたよ。
担当 じつは、僕もマンガの編集はこれが初めてだったんですよ。ですので、かなり慎重になっていたと思います。
ふみ 高校3年生の1年間を四季で割るという形は、かなり最初から決まっていたと思います。春、夏、秋、冬、それからまた春が来て終わるという構成。
担当 当初、澄花はふみ先生がこうありたかったと思う高校生像を描こうということで始まったんですが、わりと始まってすぐに、先生自身とすごく近い感じになってきたんですよね。
ふみ 自然とそうなってしまったんですよね。この子もマンガ家をめざしているので、進路についての悩み方などが自分に似てきてしまって。
——舞台を奈良にしたのは?
ふみ 自分の故郷を描いてみたいなと思って。あ、それまで埼玉に住んでたんですけど、ちょうどこの作品の立ち上げの頃、震災をきっかけに実家に帰ったというタイミングもありました。