『思春期シンドローム』第2巻
赤星トモ 講談社 \617
(2014年6月23日発売)
特にクラスで目立つわけでもない、フツーの女子高生たちの日常のワンシーンを切り取るオムニバス。
1エピソードわずか2~4ページという短さも、リアルな時間を演出するのに一役買っている。
“高校生”は青春の代名詞だ。では、高校生ならではの理想の青春像ってなんだろう?
制服で放課後デートしたり、部活に打ちこんで仲間と励まし合ったり? 中学生とは違ってバイトもできる、バイクの免許もとれるし、仲のいい友だちと旅行だって……。
しかし、そんなわかりやすいリア充的なトピックばかりが青春ではないと、本作は語りかけてくる。
いざ学校から帰ろうというときに、どしゃ降りの雨。昇降口にいた女子3人は、図書室で時間つぶしをしようかと考える。
そこに現れた同級生を図書室に誘うが、彼女は「いや……いいよ。私」「走って帰るから」と、雨の中に駆けだしていくのだ。
その背中を見た3人も、つられるように昇降口を飛び出してしまう。
ずぶぬれになり、笑いあいながら走る女子高生たち――こんな1コマだって、高校生の青春なのだ!
一人ひとり、だれもがドラマを持っている。
本当になんてことないような日常に見えるけど、それは彼女たちだけのもの。
また、女子高生たちを見守る、アラサーの男性教師というキャラクターも、本作のキモである。
「あいつらはまったく…」と呆れながらも、甘酸っぱい気持ちを思い起こし、まぶしげに目を細める。そんな彼の視点は、私たち大人の読者のよりどころにもなっているのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」