『さよならハルメギド』第1巻
きづきあきら/サトウナンキ 双葉社 \620+税
(2014年7月10日発売)
ときは1989年。主人公の将太は、母子寮で母と2人で暮らす小学3年生である。ふだんはまだまだ無邪気だが、世の中の複雑さや矛盾が見えてしまうくらいにはものがわかってきて、ときにそれにもどかしさを感じもする……そんな年頃の少年がいきいきと描かれる。
ページをめくるごとに将太の惑う心がダイレクトに伝わって、思わず感情移入しながらドキドキしてしまう。
幼いながらに、将太はさまざまな葛藤に揺れる。
母が、父と離婚した原因は自分にあると思っていること。たまに会う父のことも大好きで、復縁してほしいと思っているけれど、母にその気はないらしいこと。母に接近する大学時代の後輩という男は正直じゃまだが、悪いやつではないようだし……。
気になるクラスメートの女子や、同じ母子寮の住人でやはり面倒な家族問題を抱える少女も、気づけば心のなかで大きな位置を占めている。
さらには1999年には人類は滅亡するらしい? 大人も子どももわからないことだらけ、この世界は謎だらけ。疑問は押し寄せるばかりで、どう処理していいかわからずモヤモヤする少年がいじらしく、愛おしくてたまらない。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」