『駒ひびき』第2巻
むらさきゆきや/さがら総(作)水鳥なや(画)高橋道雄(監)
KADOKAWA/富士見書房 580+税
(2014年12月6日発売)
萌え系の女の子と卓上競技といえば、高校麻雀部を舞台にした小林立『咲 -Saki-』があるが、本作は高校将棋部が舞台。
それぞれに思いを抱えながら、将棋に打ち込む少女たちの姿が、熱くも愛らしく描かれている。
高校将棋の強豪校・帝都女子高校将棋部。この春は中学全国優勝校から2人の新入部員が入ったほか、永世名人の孫が新1年生にいるという噂もあって、部は色めき立っている。
そんななか、将棋部をなんの気なしに眺めている新入生がいる。話を振られても将棋部の事情には疎いうえ、将棋自体にも興味がなさそうな彼女の名前は、水瀬あゆみ。
あゆみは同じクラスの今井ユズに誘われるままに将棋部に飛びこみ、1年生同士で対局をさせられることになる。全中優勝者で自信満々の伊橋まりに、簡単に負けると見られていたあゆみだったが……!?
そう、あゆみこそが永世名人・冷泉重次郎の孫。幼い頃から祖父と将棋を指してきたが、その祖父を亡くして、将棋への情熱も将棋を指す理由も見失ってしまっていた。
しかし、父親の借金返済のためにプロを目指す久隅鋭利香と対戦したことで、再び将棋のおもしろさに目覚め、棋道を進んでいくことになる。
もちろん将棋の対戦を楽しむ将棋マンガでもある本作だが、その真髄はやはり“萌え”にある。
キャラクターやその描写も“萌え”。さらに言えば、将棋に“萌え"ている女の子たちのマンガでもある。
プロになるために負けられないと気負い、笑顔も隙も見せようとはしない鋭利香。そんな彼女と対戦したあゆみは、将棋は楽しんだほうが勝ちだと言い、鋭利香の形勢逆転──その一手、コマが置かれる音に、ときめきを覚える。
顔を赤らめて、身体を縮め、「激しい…… 奥まで響いちゃう……」。マンガ的演出としても、まさに“萌え”な場面だが、あゆみは将棋のおもしろさにときめいて“萌え”ているわけだ。
そう、本作は女の子ものということ含めて、“燃える”将棋マンガではなく、“萌える”将棋マンガ。
サブカルチャー、とくにアイドル好きとして知られる高橋道雄2段が監修を務めているのも一興だ。
最新2巻では、あゆみは祖父の愛弟子だった少高校選手権優勝校の主将・神夜和泉と出会い、初めてそこでライバル感情というものを抱く。帝都女子は、その神夜たちも出場する都大会へ進出するが……。
あゆみはもちろん、読者も将棋と本作にますます熱く“萌え”ていくことになりそうだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。