日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『アライアズキ、今宵もあずきを洗う。』
『アライアズキ、今宵も小豆を洗う。』第1巻
大塚英志(作) 山崎峰水(画) KADOKAWA ¥580+税
(2016年4月4日発売)
『黒鷺死体宅配便』のコンビによるスピンオフ作品。といってもこのマンガだけでじゅうぶん楽しめます。
それにしても、主人公が「妖怪小豆あらい」って、めちゃくちゃ地味だな! 山んなかで小豆をシャクシャク洗う妖怪じゃないか。地方によっては福の神だったり人さらいだったりするが、それでも目立つ妖怪じゃない。
この存在を大胆にアレンジしたのが本作。どんな鬼よりもはるかに強い存在として描いている。
まず「小豆」の意味を解釈。
豆は生命の源であるため、災厄を打ち払う力がある。
漢字にすると「魔滅(まめ)」。これは節分の豆まきの由来になっている言葉だ。
となれば、小豆でも同じだろう。豆の一粒を使っての攻撃は、邪に対してあまりにも強力だ。
加えて、豆を「心」と捉えている。アライアズキは心のなかの汚れを一粒、対象の同意のもと奪い取ることができる。
抜き出すことで、相手の心は苦痛から救われる。なるほど、間違いなく「小豆」を「洗って」いる。
特徴的なのは、主人公のBL作家女性視点で、妖怪たちを見ていることだ。
ベトベトさんや百々目鬼など、登場する妖怪はイケメンぞろい。彼らを見て妖怪BL妄想が膨らむのなんの。
たとえば座敷わらしの少年に出会った時、彼女は「強制女装キャラ」「もしアタシが男だったらあーして…こーして…」と妄想する。
ところが彼はハッキングに長けていて、お金をふんだくりまくっている。それを見て「とんだ攻めキャラだよ!」とさらっという。
こんなノリなので、『黒鷺死体宅配便』よりもコミカルだ。妖怪がらみで起きた事件を次々解決していくので、読んでいてたいへん爽快。
登場人物の心が洗われるたび、読者の気持ちもすっきりする作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」