日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『その時、君が泣いた』
『その時、君が泣いた』第1巻
藤原よしこ 小学館 ¥429+税
(2016年5月10日発売)
ここにあるのは、ただ「好き」ということ。
ただただ、相手が大事であるということ。
教師と生徒の恋愛である以上、モラルに言及する部分もある。
が、あまりにピュアな気持ちの前では、世間一般のモラルなど露と消えるもの。
これは、2人がひたすら想いあい、涙してしまうほどの恋の物語なのである。
古文を担当する高校教師、夏目律(なつめ・りつ)。
黒縁の伊達眼鏡におかっぱ、ダークスーツに白シャツ。
少々重たくダサくもあった彼女が、ひとりの生徒の言葉により動かされ、髪をカットし眼鏡を外す。
その生徒の名前は相沢忍(あいざわ・しのぶ)。バスケ部の彼の行動が、言葉が、じわじわと律に染みこんでいく。
そして忍も、日々の学校生活のなかで律を見つめ、想いをさらに深めていく……。
ストーリーは1話ごとに、律の視点と忍の視点を行き来する。
同じエピソードが両側から描かれることも多く、彼ら2人の気持ちが読者のなかにすんなりと入ってくる。
またその描き方も、回想であったり、もう片方からは見ることのできなかった部分であったりと、なかなか絶妙な表現方法をとっている。
ややゆっくりした心地のよい速度で物語は進んでいくが、やはり高校生のほうが歩みは早いようで、第1巻の終わりでは忍が思いきった行動に出る。
これを受けて、教師である律はこれからどういう反応を示していくのか、非常に興味深い。
忍も律も、想いがあふれてぽろぽろと涙を流すのだが、少年側が泣いても違和感はなく、その純粋さとせつなさが美しいほどだ。
忘れかけていた一途な恋に出会いたい方、ぜひページをめくってみてください。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」