365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月21日は勝新太郎(俳優)の命日。本日読むべきマンガは……。
『カツシン ~さみしがりやの天才~』第2巻
吉本浩二 新潮社 ¥580+税
6月21日は、「カツシン」こと俳優・勝新太郎の命日。
『座頭市』シリーズで役者として大ブレイクを果たしたのみにとどまらず、映画を愛する勝は演出やプロデュースの分野にも進出。さらに後進の俳優たちを多く育てたことでも知られる。
しかし、やはり勝新太郎といえば、その豪快で奔放な人柄で知られるところが大きい。
その逸話の数々は、とてもここで書ききれるものではないが、とにもかくにもその人柄は多くの人を魅了し、いまだ愛され続けている。
そして、『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』や『昭和の中坊』、そして7月の「このマンガがすごい!」ランキングオトコ編第1位にも輝いた『淋しいのはアンタだけじゃない』で知られる吉本浩二も、そんな勝新太郎に魅了された者のひとり。
その想いが凝縮されたのが、2014年に連載が開始された『カツシン ~さみしがりやの天才~』である。勝新太郎の命日に読むには、これ以上ふさわしいマンガ作品はそうそうないだろう。
作品の方向性としては、基本的に『ブラック・ジャック創作秘話』と同じく、勝新太郎を知る人たちによる証言をもとにした再現系のもの。
映画に関わったスタッフや、妻である中村玉緒はもちろんのこと、写真家の篠山紀信、若き日に役者として寵愛を受けた原田美枝子や、かつてNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』で緊張感あふれる共演を果たした渡辺謙など、幅広く関係者が登場。最後は息子である俳優の鴈龍による証言で締めくくられている。
単行本は全2巻で完結しているが、どこを切り取っても勝新太郎らしさあふれるエピソードが詰めこまれており、いかに彼が愛されたか(そして、吉本浩二がいかにカツシンを愛しているか!)がしみじみとうかがい知れる。
その内容についてここで書いてしまうのは無粋というものだと思うので、まずは読んでいただきたい。
ちなみに勝新太郎と言えば、1967年に設立した勝プロダクション時代、大ヒットした『子連れ狼』をはじめ、『男一匹ガキ大将』や『御用牙』など、マンガや劇画の実写化に非常に積極的だったことでも知られる。
その嗅覚の鋭さもさることながら、実写化した作品自体のクオリティもみごとなもの。
なにげにカツシンとマンガの関わりは、非常に深いのかもしれない。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。