日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ラストゲーム』
『ラストゲーム』 第10巻
天乃忍 白泉社 ¥429+税
(2016年6月3日発売)
地味だが努力家で優秀な九条美琴を、自分に惚れさせたら勝ち、と思いこんだ高スペック男子・柳尚人による一方的なゲームは、小学校から大学への10年におよぶ片想いへと変容した。
紆余曲折ののち、やっと九条も柳への恋愛感情を自覚したものの、柳にはほかに好きな人がいる、と誤解したままで?
今回はホテル王である柳の父親から、九条が軽~く品定めをされるのが大きなイベントのひとつ。
しかし、九条はやっぱりブレずにいつものとおりなのがほほえましい。むしろ柳のほうが大きな変革を起こす気配あり。やっと男らしくなったぞ、柳!
この2人が出会っていなかったら、柳は少々薄っぺらい王子様にしかなれなかっただろう。
九条も、柳にふさわしい存在になるため、対人関係をがんばって世界が広がっている。
相馬蛍や橘桃香も、彼らにかかわらなければ、コンプレックスの裏返しによるモテばかりを追究して、自分を偽ったままで本物の恋愛のときめきを知らない可能性もあった。
あざとさがいっさいない、ありのままのヒロインが成長しながら周囲の人を幸せにしていく。恋愛だけでない魅力も含めて、すぐれた王道少女マンガなのだ。
この純情な、最初で最後のゲームは、「LaLa」8月号にて、ようやくエンディング(最終回)が見られるとのこと。
<文・和智永 妙>
『このマンガがすごい!』本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。