日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『のぼさんとカノジョ?』
『のぼさんとカノジョ?』 第6巻
モリコロス 徳間書店 ¥562+税
(2016年6月20日発売)
野保(のぼ)さんは、姿が見えずしゃべることもできない幽霊と同居生活中。
ホワイトボードを使って文字を書くことで、コミュニケーションをとれるようになってから、2人(?)はみるみるうちに親しくなっていった。
いつしかお互い惹かれあい、両思いに。どんな相手か、のぼさんは感じとることができないけれど、彼は通称「カノジョ」を愛し、とても優しく接している、カノジョに心からいやされている。
恋心は見た目や声からだけで生まれるものではない、と証明するこの作品。
ホワイトボードに、ちょっと嫉妬まじりに文字を書くカノジョはとってもキュートだ。彼が恋に落ちるのはじゅうぶんわかる。
しかしカノジョ側は、そうもいっていられないようだ。
のぼさんはめちゃくちゃ自分に愛情を注いでくれている。本当にうれしいし、いっしょにいたい。
けれど一生いっしょにいることはおそらくできないだろう。だったら彼のそばにいて、彼の時間を自分のために費やさせるのは、無駄ではないのか。
そもそも幽霊で残留しているのにはなんらかの理由があるのだから、成仏するのが筋じゃないのか、とカノジョは考える。
第6巻では、成仏するために頑張ろうとするカノジョと、それを聞いてパニックになるのぼさんの様子が描かれる。
本当に永遠の別れになる可能性は大。とてもじゃないが、気持ちは割りきれない。
これをうまくコメディタッチにまとめているのがすごい。
表紙にも出てくる大学の仲間たちが、カノジョの存在に対して半信半疑。なので、わりと事態に対していい加減なのが、いい塩梅で作風を軽やかにしている。
せつないシーンはかっちり描きつつ、全体的に明るいので、一冊の読後感は今まで同様さわやかだ。
のぼさんが、触れることができないカノジョを布団に包んで(カノジョからは物理干渉が可能)、抱きしめるシーンがある。
性的な接触はできないし、体温を感じることもできない。けれど心は間違いなく、安らいでいる。
2人の関係が虚しいものだとは思えない。
なんとかいい落としどころに向かってほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」