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『兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿』第7巻 木々津克久 【日刊マンガガイド】

2016/05/25


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿』


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『兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿』第7巻
木々津克久 秋田書店 ¥429+税
(2016年5月6日発売)


幽霊となった警官の兄と、女子高生の妹のコンビが、人間の愛憎が生みだす事件に挑む『兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿』は、5月に発売された第7巻にて完結となった。

主人公の少女・赤木蛍は、家事全般をこなしつつ、勉強も着実に進めて、名門私立高校の推薦入学枠を獲得したしっかり者だ。蛍の兄・圭一は、文武両道、誠実な性格で将来を有望視されていた警官であったが、ある日突然失踪してしまった。
圭一の遺体が見つからないことから、家族は生存の希望をつないでいたが、蛍はその死を確信していた。なぜなら、巡査の制服をまとったまま、骸骨になった姿の圭一が目の前に現れたからだ。

人ならざる異形のものが「視える」体質の蛍が、圭一の力を借りて、トラブルの背後に潜む霊や怨念を退治していくというのが本作の基本パターン。
そして、物語全体を貫く謎として、犯罪者を裁く私刑集団「十二人委員」の存在がある(どうやら「十二人委員」は、圭一の死にも絡んでいるらしい)。

蛍が「視える」ものは、通常の人間には見えない。そうした認識の齟齬(そご)から、ミステリマンガとして、いくつかおもしろい仕掛けが生まれている。論理を重んじるミステリと、非論理的な存在である霊。
本来は水と油の両者を絶妙に融合させたのが本作『兄妹』なのである。

第7巻では、これまでひとりでなんとかしてきた蛍が「ひとりではどうにもならないということにも気付く」ようになる。それが象徴的に現れているのが、第7巻の表紙カバーのイラストである。兄・圭一と4人の仲間に囲まれた蛍は、心なしか穏やかな表情に見える。
 第7巻での見せ場は、蛍が、天才少女・青葉真琴(表紙右端の眼鏡の少女)の導きにより、仲間に受け入れられていく場面だろう。
それだけ読んでも圧巻の迫力なのだが、それまで蛍がトラブル解決に家事にと一人で気を張って奮闘してきたことを知る読者にとっては、さらに感慨深いものとなるだろう。
ちなみに、真琴が蛍を受け入れようと語りかける場面には、70年代の少女マンガを連想させる懐かしさがあった。ひょっとして木々津克久って少女マンガ好きなのだろうか。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)で国内本格ミステリ座談会とミステリコミックの年間総括記事等を担当。また現在発売中の、「ミステリマガジン」5月号(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。

単行本情報

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