日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ほねほね探偵ホームズ』
『ほねほね探偵ホームズ』第1巻
鳴希りお KADOKAWA ¥533+税
(2015年9月26日発売)
シャーロック・ホームズは、パロディでとり上げられることがじつに多いキャラクターで、ホームズが犬だったり、ワトソンが女性だったりと、いろんな「ホームズ&ワトソン」が世に送り出されてきた。
でも、ホームズが少女で、ワトソンが恐竜の骨、という組み合わせはこれまでにはなかったのではないかと思う。
本作『ほねほね探偵ホームズ』は、そうした奇妙な探偵コンビのドタバタと絆を描いたものである。
ジョン・H・ワトソンは、17歳で死んだ。
それでも、シャーロックが心配すぎて、恐竜の骨に憑依してよみがえってきた(なぜ「恐竜の骨」かは、今後あかされていくのだろう)。
しかし、きつめの美少女探偵・シャーロックは「お前のようなワトソンがあるか!」と認めようとしない。恐竜の骨になったワトソンを受けいれないのは、それだけ生身のワトソンへの愛情が濃かったことへの裏返しなのだろう。
邪険にされながらも、ワトソンは押しかけ女房的にホームズと行動をともにする。
ワトソンは、恐竜の骨だから、怖いものなしである。
ホームズが銃で狙われれば、その弾丸を頭蓋骨で受けて、その身を守ることができる。
燃えさかる家にも「僕はもう骨だから 火も怖くない!!」とためらいなく突っこんでいく。
あまりにもスーパーマン的すぎるので、2巻以降ではなんらかの弱点が出てきたほうが物語としてはおもしろみが増すことだろう(1巻には人間のときの感覚で、揉み手をしたら「ゴリゴリ」っと大きな音がして、潜んでいることがバレそうになる――なんて場面があったが、こうした感じのエピソードがあるといい)。
レストレード警部、アイリーン・アドラー、マイクロフト・ホームズ、そしてジェームズ・モリアーティといったホームズ物語におなじみのキャラクターも、大幅に設定を変えて登場してくる。
レストレード警部は、赤毛でアイパッチをつけた小柄でボーイッシュな美少女だし、アイリーン・アドラーはホームズの遠縁だが、ホームズを養子にすることにご執心なキャラクターになっている。
モリアーティまで登場したので、キャストはすべてそろったという感じだ。
シャーロックも、徐々に恐竜の骨のワトソンを受けいれつつあるので、これからの2人の活躍が楽しみである。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。最近では「名探偵コナンMOOK 探偵少女」(小学館)にコラムを執筆。