『ガンロック』第1巻
猪原賽(作)横島一(画) 秋田書店 \429+税
(2015年2月6日発売)
シャーロック・ホームズが推理をしなくちゃいけないなんて、誰が決めたッッ!?
コナン・ドイルかッ! ……そりゃそうですね、すいません。
ともあれ、いまや空前のホームズ・ブームである。シャーロック・ホームズの世界観を現代に移したテレビドラマ『SHERLOCK/シャーロック』(主演:ベネディクト・カンバーバッチ)はあいかわらず絶好調で、第4シーズンの製作が発表されたし、ロバート・ダウニー・Jrの演じた映画『シャーロック・ホームズ』シリーズも、スタイリッシュで斬新だった。
さらに、イアン・マッケランが93歳になった晩年のホームズを演じるという、まるで『バットマン:ダークナイト・リターンズ』のような設定の映画『Mr. Holmes(原題)』の公開も予定されている。
そしてマンガの世界でも、以前も本サイトで特集したように、確実にホームズ・ブームの波が押し寄せてきているさなかだ。
これら近年のトレンドを見ると、原作の『シャーロック・ホームズ』シリーズをそのまま映像化(もしくはコミカライズ)するのではなく、「ホームズ+ワン・アイデア」で成り立っていることがわかる。「ワン・アイデア」を付け加えることによって、独自の楽しさを提供するだけでなく、原作とは違ったアプローチでオリジナルの魅力をいっそう引き出しているのだ。
思い返してみれば、日本にはホームズと犬を融合した傑作アニメ『名探偵ホームズ』があったじゃないかッ!
そしてこのたびリリースされたのが『ガンロック』である。
化石燃料や原子力に変わる次世代エネルギー「星核(コア)」が発明された近未来、世界は星核陣営と化石燃料陣営に分かれ、世界規模の戦争(世界動力戦争)を戦った。
その戦後、蒸気の霧に包まれた倫敦では異形の怪人が跋扈し、怪事件が頻発。探偵ポール・シャーロック・ホームズと医師ジョン・H・ワトソンのコンビが、怪人退治に大活躍する。
本作はシャーロック・ホームズをモチーフにしているのだが、推理やトリックは無関係。
ホームズとワトソンのバディ感は原作どおりだが、なにせホームズが屈強な「星核兵(コア・ソルジャー)」に変身して怪人と一騎討ちし、最後は拳で事件を解決してしまう。さながら石ノ森章太郎的な変身ヒーロー・アクションを展開するのである。
ホームズ、スチーム・パンク、バディもの、怪人バトル、拳で事件解決……と、自分たちの好きな要素をひたすら詰め込んだような“オレ的ユートピア”感覚は、まさしく「少年チャンピオン」作品のお家芸そのもの。
掲載誌は「別冊少年チャンピオン」だが、そこにはたしかに「俺たちのチャンピオン」の息吹が息づいているッ!! いわば本作『ガンロック』は、「ホームズ・ミーツ・チャンピオン」的作品といえるだろう。
“燃え”と“萌え”をこよなく愛する秋田書店チルドレンは必見だッ!
ホームズ・ファンも、とりあえず必見だッ!!
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama