日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『高倉んちのもうひと皿』
『高倉んちのもうひと皿』
高倉あつこ 芳文社 ¥619+税
(2015年11月7日発売)
だ~か~ら~、このテのグルメ料理マンガはもういいって~。
という声が聞こえてきそうだが、こちらは主人公(著者)が「アテは塩でもいい」根っからの飲んべえだけに、酒のアテに特化した料理マンガというのが、ありそうでなかった感じ。
お酒が飲めない人は人生を損している! と信じてやまない私のような人間は、それだけで食指をそそられたりもする。
油あげで水菜を巻いて食べるしゃぶしゃぶ、みょうがが主役の肉巻き、海老と根三ッ葉のわさびおろし和え、ゴーヤの和えもの、卵黄味噌漬、鶏ササミのパリパリ揚げ……など、飲んべえにはたまらない薬味&珍味系アテが満載。ちゃんと飲む酒にあわせた料理なのも、ニクイかぎり。
ご存じ、大人気料理コミック『きのう何食べた?』が、コスパと栄養と甘辛酸バランスのとれた「家庭料理の献立のお手本」であるのに対して、こちらはアテだけにカロリーとかバランスとか関係ナシのいさぎよさ。
あくまで主役は酒ゆえ、思い立ったら即作れる(つか、飲みながらパパッと作りたい!)、ひと皿完結モノの気楽さもいい。
著者の酒豪エピソードも、恐ろしくも楽しい。不勉強な私は、お名前をググって初めて『山おんな壁おんな』の人なんだ! と気づいたが、高倉さんはこの路線も天職だと思われるので、ぜひ、女版『大市民』を目指していただきたいです。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69