日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ヤリへん』
『ヤリへん』 第1巻
カレー沢薫 小学館 ¥694+税
(2016年6月30日発売)
だ、だれですか、「カレー沢薫先生ってネコ以外のマンガも描けるんだ」なんていってる人は!?
どうです、表紙からしてストーリーマンガらしいじゃないですか!
主人公の桜沢は、恋愛官能小説家。
著書は実写映画化も決まり、世間的には売れっ子作家と目されているのだが、担当編集はキビしいのなんの。原稿用紙に目を通すや真顔で「本当にこんなオナニーを公表するおつもりで?」
「これはケツを拭くのにでも使ってください」——。見た目はキュートな女性編集者・早坂珠子はこんなドSなセリフを吐く一方で、桜沢がしゅーんと落ちこめば後ろから抱きしめてくれたりするから始末が悪い。
しかし、これがいわゆるツンデレのひと言で片づけられないキャラなのである。
じつは敏腕編集者、キレ者というよりワルの域。ヒット作を書かせるために様々なアプローチをしかけ、人の心を蹂躙することもいとわない。
魅力的でえげつない珠子に、桜沢は翻弄されっぱなしだ。
大方は作者得意の不条理な会話で笑わせるノリで進行していくのだが、珠子の “毒舌”が妙にシリアスに刺さる瞬間も。
「あれっ今のギャグだけど……なんかマジ?」とドキッとしたらすでに珠子に掌握されている証拠。
“裏『重版出来!』”になるかもしれない(?)本作に注目せよ!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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