日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『重版出来!』
『重版出来!』第7巻
松田奈緒子 小学館 ¥552+税
(2016年3月30日発売)
心が沸騰するほど熱いマンガが読みたい! そんな気分にぴったりなマンガが『重版出来!』だ。
出版業界を舞台に、マンガ編集者、漫画家、販売担当者、書店員、バイク便ライダーなどなど、ひとクセもふたクセもある人たちが仕事に取り組む様子を描いた『重版出来!』。この春からはテレビドラマ化もされるなど、すでに大人気のマンガだが、まだ読んでいない人にはぜひぜひおすすめしたい。
なんたって、読んでるこっちが息切れしそうなほどに熱量が高いのだ。
たとえば第7巻では、賞を取れないことに気をもむ中堅漫画家の葛藤が描かれている。
気晴らしに書店に行くと、若者がスマホで調べた口コミやレビュー(まさに「このマンガがすごい!」みたいなサイトとか)、受賞歴などを参考に、「読んでても恥ずかしくない」マンガを購入しているのを目の当たりにしてしまい、落ちこむ……という描写が、いかにもリアル!
それでも、漫画家は心を立て直す。自分を応援してくれるファンこそが、自分に贈られた賞だと気づけたからだ……。
って、なに青臭いこと言ってんだよ! と思うでしょー?
でも『重版出来!』はこの青臭さを、違和感なく読ませてくれる。
真剣に仕事する時の泥臭さ、かっこ悪さを引き受ける登場人物たちに、すっかりまいってしまうのだ。
個人的には、高校生のとき、部活の前に『スラムダンク』を読んでやる気モード全開にしていた、あの感じに重なる。
『重版出来!』は、仕事に効くアドレナリン誘発マンガだ。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。