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【日刊マンガガイド】『死人の声をきくがよい』第4巻 ひよどり祥子

2014/07/28


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『死人の声を聞くがよい』第4巻
ひよどり祥子 秋田書店 \552+税
(2014年7月18日発売)


マンションのなかで目玉と舌と内蔵をくり抜かれる怪事件が発生! 死者を蘇らせる悲しき因習の島! もし人間の体が“霊の通り道”になってしまったら!? ギャァァァ~~~!
意味なくこの巻の内容で煽ってみました(すいません)。

「正統派ホラー」の惹句とともに、鬼才・ひよどり祥子(a.k.a. うぐいす祥子)が「チャンピオンRED」誌で手がけている本作も、いよいよ4巻目。
これを機に、あらためて1巻から再読してみたが、ストーリー&ビジュアルともに、まったくテンションが落ちていない(むしろ上がっている)のが驚異的!

本作の主人公は、「霊視能力はあるが、霊がなにを伝えたいのかさっぱりわからない」という特異体質を持つ男子高校生の岸田。彼には「死んだ幼なじみ」であるセーラー服の美少女・早川さんの霊がつきまとっている。
そんな、つのだじろう『うしろの百太郎』の設定を、さらにツイストしたようなユニーク・コンビ(なにしろ、早川さんはなにも喋らないので、百太郎ほど役には立たないのだ)が、次々と発生する怪イベントに友人たちとともに巻き込まれていく……。

あらゆるホラー表現や恐怖ロジックが出尽くして、轍のようにテンプレ化してしまった現在。ホラーマンガに求められているのは、そんなテンプレをしっかり踏まえたうえで、登場人物たちを追い込んでいく「アイデア」と、その恐怖を絵にしていくときの「誠実さ」なんだろうと思う。
その2点への踏み込み方において、本作は“超”がつくほどすばらしい。
「笑っちゃうぐらい怖い」というフレーズとは別の意味で、ここには“恐怖表現”と、そこにつきまとう“笑い”のデリケートゾーンが提示されている。

また、扱う題材が幅広いのも本作の魅力。
民話・寓話の類から、いわゆる「モダンホラー」まで、古今東西のホラー要素を、ここまで自作のなかに並列に“なじませた”漫画家も、そういないだろう。

マンガにかぎらず、ホラージャンルが好きな方全般に、本気でオススメ。
というか、各巻とも読み切り話がメインなので、どの巻からでも読むがよい!



<文・大西祥平>
マンガ評論家、ライター、マンガ原作者。著書に『小池一夫伝説』(洋泉社)、シリーズ監修に『ジョージ秋山捨てがたき選集』(青林工藝舎)など。「映画秘宝」(洋泉社)誌ほかで連載中。

単行本情報

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