日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ぜつぼうごはん』
『ぜつぼうごはん』 第1巻
くじらいいく子 小学館 ¥552+税
(2016年7月29日発売)
死の間際に現れる少女、満腹天。
彼女は「人生最後の飯」を作る、という。
ある人は思い出のごはんを。またある人は、夢に見たごはんを。
食べたあと、魂は成仏していく。
死と食をテーマにしたオムニバスストーリー。
題材が題材なのでだいたいの話で人が死ぬが、内容はそれほど暗くない。
詐欺で金をたんまりもうけていた男性は、母親の作った上手ではないごはんを食べて、「うめえぇぇぇぇーっ!」といって消えていった。
極度に欲の強い修行僧は、死ぬ前最後だからといって満腹天にあれやこれやと細かい注文をつけ、もりもりと肉をほおばった。
必ずしも「いい話」ではない。
死ぬというのは、必ずしもドラマティックなことではない。時に滑稽なこともある。
死に瀕した最後に食べるごはんは、人生の思い出の一品になることは多い。だが本当にどうでもいいもので昇天することだってある。
登場人物が選ぶ最後の飯は、その人間の価値観だ。だから時には、読者側が共感できないものもあってしかるべきだ。
作者は意図的にずらした、多様な価値観を描いている。
同情できようと、理解できなかろうと、それが本人の人生。合掌。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」