365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
さて、9月19日はアルプス山脈の氷河で「エッツィ・ジ・アイスマン」が発見された日。本日読むべきマンガは……。
『アイスマン』第1巻
くじらいいく子 小学館 ¥485+税
1991年9月19日。アルプスをおとずれたドイツ・ニュルンベルクからの観光客・ジモン夫妻は、溶けた雪の下からミイラ化した遺体を発見した。
遺体の状況から当初、それは通常の遭難者の遺体と考えられたが、奇妙なことにその“遺品”は、現代では見慣れない物ばかり……。考古学者が調査したところ、なんとこれらはヨーロッパの青銅器時代前期の物で、遺体はなんと約5300年前の男性だったことが判明した。
イタリア・オーストリア国境にある「エッツ渓谷」の氷河で発見されたことにちなみ、遺体は「エッツィ・ジ・アイスマン(Otzi the Iceman)」と呼ばれた。
そんな古代のロマンあふれるアイスマンだが、現代で「アイスマン」といえば、沈着冷静でガッツをむき出しにせず、内なる闘志を燃やすスポーツマンのたとえに使われることが多い。
しかしながら、くじらいいく子が1996年に「ヤングサンデー」で連載していたマンガ『アイスマン』に登場する主人公・郷田弾(ごうだ・だん)は、まったく逆のタイプ。
何しろ獲れたてのヒラマサを抱えてひとり横浜までやって来たうえに、初めて見たアイスホッケーのリンクで華麗なスケーティングを見せる横田まひるに一目ぼれ、みずからもホッケー選手をこころざすくらいのワイルドな男なのだから。
作品は一貫して弾の弟である伊達瓶太郎(だて・びんたろう)の視点を通じて描かれる。
史上初のNHL(米国ナショナルホッケーリーグ)プレイヤーを目ざす瓶太郎は、その野望に反して才能はイマイチ、しかもクラスでは陰湿なイジメにもあっている。
弱小アイスホッケー部を弾が引っ張って試合を勝ち進んでいく様子と、そんな粗暴な兄を最初は嫌っていた瓶太郎が、イジメを克服して成長していく姿を作者お得意のコメディタッチで描いた作品。
まっすぐに生きる人間は絶対に折れない……スカッとしたい人にオススメのマンガなのである。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、「月刊ヒーローズ」(ヒーローズ)ほかに参加する。ただいま好評発売中の『バケモノの子 オフィシャルガイド』、『「仮面ライダードライブ」フォトブック~Drivin’Album』もやってます。