『ねじまきカギュー』第16巻
中山敦支 集英社 \514+税
(2014年7月18日発売)
真の愛とは成長の遅い植物である……カギューちゃんとカモ先生が単行本16巻をかけてたどりついたゴールを前に、そんなフレーズが浮かぶ。
2人の愛は、カギューの「螺旋巻拳」のような猛スピードで螺旋を描きながら、カタツムリの歩みで中心をめざしたのだ。
様々な格闘術と心技体を超えるパワーが、サイコな火花を散らしながら、このマンガは「愛のありかた」を問い続けてきた。
ストーカーの愛、独占愛、自己犠牲の愛……。個性なきものを切り捨てる二千恵(元)理事長の「絶対個性主義」も、愛の存在を証明したい心の暴走だった。
最終巻でのラストバトルが、「完全なものが不完全なものをもてあそぶ愛」との激闘だったのも必然だ。
愛する人が死んだ世界で生き続けるのと、愛する人を追って逝くこと。
究極の選択の先にあったものは………世界中のみんなが手を繋ぐラブ・アンド・ピース!
巻末描き下ろしのおまけマンガで、「あの人」も救われる優しさにホッとします。
<文・多根清史>
「オトナアニメ」(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。