日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ハイパーダッシュ!四駆郎』
『ハイパーダッシュ!四駆郎』 第1巻
徳田ザウルス(作) 武井宏之(画) 小学館 ¥583+税
(2016年8月12日発売)
『ダッシュ!四駆郎』が帰ってきた!
しかも、タイトルも『ハイパーダッシュ!四駆郎』にパワーアップ。
ハイパーダッシュといやあ第1次ミニ四駆ブーム時に発売されたグレードアップパーツ(ミニ四駆を改造するための、タミヤ公式パーツの総称)ながら、あまりにも強力すぎるパワーゆえに公式大会では使用を禁止されたハイパーダッシュモーターを彷彿とさせるではないか。
これだけでも、かつてのミニ四キッズ(現・アラフォー)のテンションも上がるってもんだ!
『ハイパーダッシュ!四駆郎』は、「コロコロアニキ」にて好評連載中のミニ四駆マンガ。
1987年から1992年にかけて「コロコロコミック」で連載された、徳田ザウルスによるミニ四駆マンガ『ダッシュ!四駆郎』の正統な続編にあたる。
前作は、80年代後半に日本中の小学生たちを席巻したミニ四駆ブームの真っ最中に展開したということもあり、劇中のオリジナルミニ四駆の商品化やアニメ化などのメディア展開を果たした大ヒット作だ。
ミニ四駆が大好きな熱血少年・日ノ丸四駆郎が、ミニ四駆チーム「ダッシュ軍団(ウォリアーズ)」の仲間たちとともにミニ四駆のレース大会を勝ちすすんでいくという単純明快なストーリーもさることながら、様々な逆境を予想外の改造や華麗な操車テクニックや必殺技(ひたすら直進するだけのミニ四駆なのに!)で乗りこえるスリリングな展開。
そして、ホビーや自動車に精通した徳田ならではの迫力満点なマシン描写など、ひとつの少年マンガとしても見どころ満載な作品でもあった。
しかし、徳田ザウルスは2006年に惜しまれつつ他界。
今回、その遺志を継いで続編を描くのは『シャーマンキング』、『ユンボル』で知られる武井宏之だ。
じつは武井は、中学3年生の時にミニ四駆デザインコンテストに参加し、見事優勝。
徳田の手でリライトされたマシンが、「ダッシュ3号 流星(シューティングスター)」として『ダッシュ!四駆郎』に登場したという浅からぬ縁の持ち主なのだ。
そんな「四駆郎・愛」に満ちた武井が描く本作は、最初から最後まで「わかってる!」感であふれている。
物語は、四駆郎が突如失踪したあとからスタート。
かつて強い絆で結ばれていたダッシュ軍団も、中心メンバーの四駆郎を失ったことで空中分解してしまう。特に最初に四駆郎の仲間となったタンクローは前作第1話に初登場した時のような凶悪な外見に戻っているではないか!
そうそう、タンクローって最初はすげえ嫌な奴だったのに、いつの間にか頼れる力持ちデブキャラになったんだよね!しかしその後、無事帰還した四駆郎と再会したタンクローは、いつの間にかかつてのコミカルキャラにリバースしちゃうのだ。
そして四駆郎たちは、これまた初登場時のような悪キャラ感全開の進駆郎とレース勝負!
レースの楽しさを語りあう四駆郎や、必殺技の応酬などが熱いタッチで描かれる。
前作のシチュエーションや設定を踏襲しつつも、続編としてのもりあがりもきちんと抑えるという横綱相撲ぶりは、さすがヒットメーカーの武井宏之といったところか。
また、ダッシュ軍団のミニ四駆がそれぞれ独自のパワーアップを果たしているところも要チェックだ。作品が新しくなったということで、当然のごとくマシンも現代風にリニューアル。
なかでも四駆郎の愛機・ダッシュ1号 皇帝(エンペラー)は、外部ロールゲージという追加パーツを装着することで、もとの皇帝の意匠を残したままパワーアップ感を演出している秀逸なデザインには脱帽だ。
(巻末には、『聖闘士星矢』のクロス分解装着図まんまの、追加パーツ分解装着図が掲載されているのに、またも脱帽!)
そんな彼らの新たな敵は、なんとミニ四駆を使った国際テロ組織「ダーク・ドミニオン」だ。
ホビーを使って、やたらとスケールのでかい犯罪を犯すのがホビーマンガの定石だが、「テロ組織」というのが妙にリアルで現代的。
ホビーマンガのはずなのに、ビルとかがドッカンドッカン爆破されちゃうのである。
ミニ四駆レーサーである四駆郎たちは、いかにしてテロリストたちの野望を打ちくだいていくのだろうか。
のっけから手に汗握る展開と、懐かしさに思わず目頭が熱くなる『ハイパーダッシュ!四駆郎』に今後も注目したい!
<文・有田シュン>
ライター、編集者。シティコネクション所属。著書に『アウトサイダー・プラモデル・アート 青島文化教材社の異常な想像力』、『よみがえるケイブンシャの大百科[完結編] 』。編著に『KOWLOON'S GATE ARCHIVES』。