日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『太郎は水になりたかった』
『太郎は水になりたかった』 第2巻
大橋裕之 リイド社 ¥666+税
(2016年9月9日発売)
太郎とその親友ヤスシの中学生活をバカバカしくもリリカルに描いた『太郎は水になりたかった』の、まさかの第2巻が出た。
将来の夢や勉強やスポーツよりも、女子とうまくしゃべれないことが人生の最重要テーマだった、あの頃。
異性にモテたいとか、何かデカイことをやりたいとかいう情熱は人並みにあれど、何をどうすればいいのかサッパリわからず、意味不明な言動に出ては自爆する。
「青春」と呼ぶにはあまりに地味で鬱屈とした彼らの姿は、同じく非リア充な不発の日々を過ごしていた者ならば、なつかしくってせつなくって、胸をしめつけられずにいられない!
まったく気にしてなかった娘が友だちが好きだと知ったとたん、気になりだしたり、友だちを呼び捨てにできなくて困ったり……。
思春期あるある満載のなかでも、「妄想では無茶するからな!!」というセリフには心から共感。
自身の原点として今一度、ココロにメモしておきたい!
妄想部の活動もハタからみるとヤバイんだろうけど、なんとも楽しそうで。
リア充男女に嘲笑されようと、妄想を共有できる仲間がひとりでもいれば大丈夫、と思えてくる。
『桐島、部活やめるってよ』で、映画部のアイツらにわが身を重ねてしまった人、必読です。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69