365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月26日はペンの日。本日読むべきマンガは……。
『白泉社文庫 鏡花夢幻』
波津彬子 白泉社 ¥524+税
11月26日は「ペンの日」。
1935(昭和10)年の今日、日本ペンクラブが創立されたことを記念して同クラブが制定したとのこと。
ペンは文房具のペンの意味だけでなく、Pは詩人、俳人と劇作家、Eは随筆家と編集者、Nは小説家の頭文字を取ってそれぞれを表し、およそ文筆に関わるすべての職業を網羅している。
日本ペンクラブは、平和を希求し、表現の自由に対する弾圧に反対する組織であり、国際的な組織である国際ペンクラブの日本センターだ。
が、何より「日本」を冠する団体でもあることから、今日はぜひ日本文学をコミカライズした1冊をご紹介したいと思う。
泉鏡花の代表的戯曲である『天守物語』、『夜叉ヶ池』、『海神別荘』の3作を収録した本作は、鏡花の美しくも妖しい世界をマンガのかたちで見事に昇華させたものだ。
波津彬子の繊細かつ華麗なタッチが原作にマッチして、幽玄な雰囲気が全編を包んでいる。
また原作のセリフをよく活かして再構成してあり、読みやすいかたちにまとまっているのもありがたい。
マンガを踏まえて原作を読むと、より理解が深まることと思う。
白鷺城の富姫、若き鷹匠の図書之助、夜叉ヶ池の主である白雪、池を守る鐘撞き堂の晃と百合、そして海底の御殿に住む公子。
原作自体、たくさんの美麗な男女が登場する作品であるが、波津の絵柄とよく合って、1つひとつのコマが1枚の絵のように美しい。
こうしてあらためてコミカライズを目にすると、鏡花の原作自体がとてもビジュアル重視であり、様々な美しいものがちりばめられた宝玉のような作品であることがよくわかる。
そのなかの一作『海神別荘』は、日本ペンクラブの電子文藝館で読むこともできる。
きょう1日、マンガと原作とで、ゆっくり文学の世界に触れてみるのはいかがだろうか。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」