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『悪魔のメムメムちゃん』 第1巻 四谷啓太郎 【日刊マンガガイド】

2016/11/30


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『悪魔のメムメムちゃん』


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『悪魔のメムメムちゃん』 第1巻
四谷啓太郎 集英社 ¥400+税
(2016年11月4日発売)


「フフフ♡」「フフフフ♡」

アパートに下宿している高校1年生の小日向日太(こひなた・ひょうた)の耳元に聞こえてくる色っぽい声。

「かわいいボウヤね」「気持ちいいコトしよっか♡」

これはもしやサキュバス(淫魔)とかなんか、そっち系の色っぽいやつ来ちゃった―――――!?
期待に胸をふくらませて足元をのぞくと、そこにいたのは色っぽさのカケラもないちんちくりんな悪魔。
悪魔要素は頭から生えた小さいツノと、ちんまりしたしっぽだけ。
色っぽい声も、よく見ればひざに抱えたラジカセから流してる?

っていうかラジカセなの!?

メムメムと名乗った幼児体型の悪魔は魔力も低いし、頭も悪く、やる気もないし、おまけに恥ずかしがって目を合わせようともしない。
もちろんラジカセから流れる色っぽい声は、先輩悪魔に吹きこんでもらったもの。当のメムメムちゃんは声も小さく、自信もない。

彼女は稀代のポンコツ悪魔だったのだ。

そんな性格のメムメムちゃんが、なぜ人間の魂を狙うような任務に就いているかといえば、「この仕事しかさせてもらえなくて」と、極めて消極的な理由が判明。
それでいて、「今…魂くれるみたいな空気出てませんでした?」とか、「でもまぁ…この調子なら…明日には魂もらえるかなって…」などの図々しい発言も。

そう、一見小動物的な、守ってあげたい系女子にも見えるメムメムちゃんだが、変なところでポジティブ? というか、自分に都合のいいようにしか人の話を聞いていないのだ。
しまいには「本当にまずいのに…せっぱつまってるのにぃぃぃ…あたしの身にもなってくれえぇ…」と逆ギレ発言をしたり、「だって…怖すぎて…つい… その時怒られない事だけに全力を尽くしてしまいました…」とか、かなりのクズっぷりを見せつける発言も辞さない始末。
キュートな外見に見合わない腐りっぷりは、さすが悪魔といったところ?

ちなみに0話で4頭身ぐらいだったメムメムちゃんは、1話になると急に2.5頭身ぐらいに縮んでいる。
これは、読み切り版として描かれた0話と、連載版として描かれた1話の間が1年間ほど空いていて、その間に著者がすっかりメムメムちゃんを描き慣れてしまったせいらしい(その顛末もインターミッションまんがに描かれている)。

『ドラえもん』『Dr.スランプ』などでもおなじみの、“ギャグまんがのキャラクターが連載が進んでいくうちにいつの間にか頭身縮んでる現象”をいきなり味わえるので貴重だ。

さらに、日太が好意を寄せる大家さんの娘でクラスメートの五木杏ちゃんからあらぬ誤解を受けたり、魔力を使い果たしたメムメムちゃんがとんでもない姿に変わり果てたり、メムメムちゃんを監督する先輩悪魔が訪問してきたり、ドキドキメムメムな展開に心おどること間違いナシ!



<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。

単行本情報

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