このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

『5年ひばり組 傑作選』 巴里夫 【日刊マンガガイド】

2016/12/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『5年ひばり組 傑作選』


5nenhibarigumikessakusen_s

『5年ひばり組 傑作選』
巴里夫 復刊ドットコム ¥2,300+税
(2016年11月18日発売)


『5年ひばり組』は、今年の7月1日に83歳で亡くなった巴里夫の代表作のひとつである。
50年代から貸本マンガのフィールドで活躍、1965年に「りぼん」で雑誌デビューを飾るとたちまち人気作家に。本作は「りぼん」で65年から4年間の長きにわたって連載された大ヒット作だ。

舞台となるのは、何かとピーチクパーチクやかましいため「ひばり組」と呼ばれている小学校のとあるクラス。若くて美人の大ユリ先生はみんなに慕われているけれど、そのじつクラスは小さな派閥に分かれていてあまり仲がよいとはいえない。
そこに転校してきたヒロインが、富士野美季だ。
見た目は美少女、勉強はまあまあだけどスポーツ万能。
ノリがよくて裏表がなくて、思ったことをズバズバいってのけるから男子もタジタジ。
彼女のいちばんの魅力は勇気のあるところだ。
宿題やテストに追いまくられ、みんなが悪い意味での競争心でギスギスしているムードを感じとると、たったひとりで先生に進言してみせる。
そんな彼女の言動にみんなも影響され、クラスの雰囲気が変わっていく。

またたく間にクラスのリーダー的存在となった美季に、ついたあだ名が「シンカンセン」。
「新幹線みたいにカッコよくて、スピードがある」という意味からだ。
そう、東海道新幹線の開通はこの連載が始まる前年のことで、これぞ人気者のあだ名にふさわしい!
クラスいちのハンサムボーイで面倒見のいい「チビパパ」、情報屋の「カンシ」、美季を親分とあがめる「マンキチ」、成績優秀な女の子「ハカセ」ら、どこにでもいそうな友人たちと、時にぶつかりながらも小学生ならではのお悩みを解決していく明朗なストーリー運びが心地よい。

筆者はちょうど2年ほど前に、20代前半の女性に「巴里夫さんの作品を探している」といわれて驚いたことがある。聞けば、彼女の母親が巴里夫のマンガを持っていて読んだことがあるということだったのだが、今ではいささか古く感じるかもしれない巴作品に、世代の感覚を超える魅力があることを実感した。
女の子のかわいらしさ、豊かな表情、当時の流行語満載のテンポのよい会話……たしかに、今読んでもすべてがいきいきとしてまぶしいのだ。
近年、巴里夫は公式サイトで一部の作品を自費出版していたが、こうして多くの人、また若い読者が手に取りやすい形で傑作選が編まれたのは喜ばしい。
草創期の少女マンガを牽引した巴里夫――その数多い名作たちの、さらなる復刊を乞う!



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

  • 『5年ひばり組傑作選』 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング