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えっ!? 奇面組舞台化!! 「奇面フラッシュ」は実現なるか!? 【B級ニュース】

2016/11/22


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「『ハイスクール! 奇面組』がついに舞台化」について。


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『集英社文庫 ハイスクール! 奇面組』 第1巻
新沢基栄 集英社 ¥562+税
(2001年12月発売)

80年代に一世を風靡したギャグマンガ『ハイスクール! 奇面組』が帰ってくるッ!!

なんと『ハイスクール! 奇面組』が来年6月に舞台化されることが発表された。突然のサプライズ発表に、往年のファンたちは色めき立ったのである。
まさか21世紀になって、奇面フラッシュが現実のものになるとは!!
キャストに関しては、DMM.comが提供するアプリ『DMM.yell』で開催されるオーディションによって決まるとのこと。募集期間は11月27日までとなっているので、「われこそは」と思う個性的な人は、この機会に応募してはどうでしょう!?

とはいえ、「週刊少年ジャンプ」での連載終了からすでに30年近くが経過している。
アラフォー以上には懐かしさ満点だが、若い世代にとってはイマイチなじみがないのも無理はない。

そこで今回は『奇面組』がどのような作品であったのか、さらに当時どのようにしてファンに受けいれられていったかを見ていこう。


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『3年奇面組』 第1巻
新沢基栄 集英社 ¥379+税
(1981年8月15日発売)

『ハイスクール! 奇面組』は『3年奇面組』の続編にあたる。

1980年に「週刊少年ジャンプ」で連載を開始した『3年奇面組』は、主人公・一堂零、冷越豪、出瀬潔、大間仁、物星大の個性的な中学生5人による「奇面組」がドタバタを巻き起こす学園コメディ。
「奇面組」の中学卒業および高校進学にともない、タイトルを『ハイスクール! 奇面組』へと改め、1987年まで連載を続けた。

奇面組以外にも、イケメンぞろいの「色男組」、体育会系の「腕組」、不良の「番組」、スケ番の「御女組(おめぐみ)」といった個性的な5人組グループが続々と登場し、それぞれにファンがついたのもブームの要因のひとつといえるだろう。
1学年が10組まであるのも、第2次ベビーブーム世代の団塊ジュニアを狙い撃ちにしたマーケティングなのかもしれない。

そして80年代のギャグマンガといえば、パロディ全盛の時代だ。当時の流行や風俗が手にとるようにわかるので、今読めばさながら“読むタイムマシン”といったところ。80年代若者文化のクロニクルとしても楽しめる (まあ、タイムマシンは『奇面組』に欠かせないギミックでもあるのだが……)。

なお、2001年には「月刊少年ガンガン」にて、舞台を現代に置き換えたリブート作『フラッシュ! 奇面組』も連載された。
この『3年奇面組』『ハイスクール! 奇面組』『フラッシュ! 奇面組』の3作品は、現在「マンガ図書館Z」で全巻が無料で閲覧できる。ぜひチェックしよう!


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『ボクの婚約者』 第1巻
弓月光 集英社 ¥370+税
(1983年発売)

さて『ハイスクール! 奇面組』といえば、アニメ人気も忘れてはならない。
フジテレビ系列で土曜日19時30分のゴールデン枠にて放映され、全86回の平均視聴率は約20パーセント。高人気を支えた要因に、当時の「おニャン子ブーム」があったことも特筆に値する。

この当時、爆発的な人気を誇ったのが、秋元康プロデュースによるアイドルグループ「おニャン子クラブ」だ。
その派生ユニットである「うしろゆびさされ組」(高井麻巳子&岩井由紀子)がアニメ版『ハイスクール! 奇面組』のオープニング曲とエンディング曲を担当したことにより、中高生からも高い支持を得た。
つまり本作は、“「ジャンプ」のアニメ”としてだけでなく、トレンドとして幅広い層に受けいれられたわけである。

なお、高井麻巳子がおニャン子クラブを卒業する際には、アニメのなかに本人が登場し、作中の卒業式でライブを行ったのも話題を集めた。
今風にたとえるなら、「AKB48」の派生ユニットである「not yet」がオープニング曲とエンディング曲を担当し、メンバーの高橋みなみが卒業するときに、アニメ本編内で卒業式をやったようなもの……といえば、若い世代にも話が通じるだろうか?

とにかくこの時代、「おニャン子クラブ」の人気は圧倒的だった。
そんな「おニャン子クラブ」にとって初主演となったテレビドラマが『ボクの婚約者(フィアンセ)』である。原作は弓月光の同名マンガだ。
弓月光といえば『みんなあげちゃう』『甘い生活』など青年誌でのエロ・コメディの印象が強い。しかし、この『ボクの婚約者』は「月刊少年ジャンプ」に連載された作品なので、お色気要素のないラブコメディである。

資産家のお嬢様の額に傷をつけてしまった主人公は、その責任を取るために婚約させられ、大病院の跡取りにふさわしくなるようにスパルタの“花婿修行”をさせられるはめに。とはいえ、美少女のヒロインと同居するわけで、親同士が勝手に決めた婚約であっても、お互いがじょじょにひかれあっていく。

ある日突然始まる美少女との同居生活……といえば、つまり『ToLOVEる』『ゆらぎ荘の幽奈さん』の先輩にあたる作品だ。

では今『ゆらぎ荘の幽奈さん』を乃木坂46で実写ドラマ化したらどうか!
あ、これはちょっとイケそうな気が……しない?


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『ぼくらのへんたい』 第1巻
ふみふみこ 徳間書店 ¥619+税
(2012年8月10日発売)

そして『奇面組』シリーズで生まれた流行語といえば「変態」だ。

いまや「HENTAI」は世界共通語になってしまったが、そういった触手とかヌルヌル系の話ではない。
『奇面組』で多用された「変態」とは、「他人とは少し変わっている人」くらいの意味あいで、それを肯定的にとらえる言葉であった。
いってみれば『奇面組』は「個性の尊重」がテーマであったわけだ。

なにしろ80年代は、不良ブームの反動として管理教育とつめこみ式の受験戦争が強化された時代。「個性の尊重」と「勉強だけがすべてではない」をうたった『奇面組』は、時代へのアンチテーゼでもあり、だからこそ当時の若者の心に深く刺さったのだろう。
もちろん作中には、2016年現在の価値観からは「好ましくない」表現もあるが、描かれた80年代当時の世相を鑑みれば、『奇面組』はかなり進歩的な作品だったといえる。

この『奇面組』的な意味あいでの「変態」を現代で描いたのは『ぼくらのへんたい』(ふみふみこ)ではないだろうか。

この作品は、それぞれ異なる理由から女装をしている3人の少年たちの物語である。
主人公の青木裕太は性自認の不一致から女装し、女装時には「まりか」と名乗る。恋愛対象は男性だ。
女装コミュニティを介して田村修(パロウ)、木島亮介(ユイ)と出会い、LGBTに関するさまざまな悩みにぶつかっていく。
まりか、パロウ、ユイの3人が、外見だけでなく言動を含めて、まあとにかくかわいらしい。

セクシャルマイノリティも、それは「個性」として社会に受け入れられていくべきだ。
マイノリティに対する風当たりがまた少し変わりそうな今、われわれはあらためて『ぼくらのへんたい』や『奇面組』を読み直す必要があるかもしれない。


舞台版『ハイスクール! 奇面組』は、当時の作品をそのままやるのだろうか?
それとも時代背景は現代に置き換えるのだろうか?
なにしろベースがギャグなので、ギャグほど時代によってはやりすたりの激しいものはない。もし現代になるなら、「男多(オタ)組」と「腐女子組」なんか出てくるのかしら。「利亜充(リアじゅう)組」とか……。

なにはともあれ、今後とも続報が待ちどおしいかぎりである。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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