365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月20日はシーラカンスの日。本日読むべきマンガは……。
『にぎり寿司三億年 THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami』
山上たつひこ 小学館クリエイティブ ¥1,700+税
1952年12月20日、コモロ諸島のアンジュアン島でシーラカンスが捕獲され学術調査が行われたことにちなみ「シーラカンスの日」が制定された。
1938年にも現・南アフリカ共和国で確認されていたが、腐敗がひどく充分な調査ができなかった。それまでシーラカンスは7000万年前に絶滅したと考えられていたのだ。
さて、そんな「シーラカンスの日」にふさわしいマンガは、山上たつひこの『にぎり寿司三億年』をおいてほかにない! 間違いない!
2008年に発行された『にぎり寿司三億年 THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami』は、山上たつひこの短編を集めた選集。
表題作の「にぎり寿司三億年」を含め、不謹慎なまでにおもしろい短編11編が収録されている。
シーラカンス捕獲に燃える魚類学の権威・魚室(←魚へんに室で「むろあじ」と読む)鮫太郎教授。
教授はアンジュアン島沖で、日本の伝統的な漁法・鵜飼いでシーラカンスを捕獲しようとしていた。
鵜飼いでシーラカンスが捕まえられるのかと疑惑のまなざしを向けられるが、鵜の足につけていたエサにシーラカンスが食いつき、見事生け捕りに成功する。
研究所に殺到する報道から逃れて帰宅した教授を、「寿司牛 牛山興兵衛」を名乗る怪しげな男が待っていた。
牛山はシーラカンスを生け捕りにしたお祝いだと寿司桶に盛りつけられた寿司を差し出す。
大好物の寿司に舌鼓を打つ教授に、牛山が願いごとを持ちかける。
「シーラカンスをあっしにゆずってくだせえ
あっしはシーラカンスの寿司をにぎってみてえんだ!!」
常軌を逸した牛山の申し出に、もちろん教授は必死の抵抗を見せる。
業を煮やした牛山は教授を殴って気絶させると研究所のカギを奪い、軽トラックで研究所を急襲するのだった。
はたしてシーラカンスの運命やいかに!?
ちなみに研究者の言によれば、シーラカンスの肉は歯ブラシのようで水っぽく、あまりおいしくないという。
また、1983年の「週刊少年ジャンプ」誌上にて、日本の学術調査隊が釣り上げ、冷凍保存して持ち帰ったシーラカンスの肉を解凍して鳥山明が食べるというグラビアが掲載されていた!
この時の証言によれば、シーラカンスはカニを薄味にしたような味とのこと。
シーラカンスをも食い物にするマンガ界の貪欲さ恐るべし!
そんな証言を参考に、寿司でもつまみながら『にぎり寿司三億年』を読もう!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。