日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『衛府の七忍』
『衛府の七忍』 第3巻
山口貴由 秋田書店 ¥562+税
(2016年12月20日発売)
1615(元和元)年、大坂落城――。
治国平天下大君・徳川家康は豊臣の残党狩りの兵に「覇府の印」なる手形を渡し、暴虐の限りをつくさせてきた。
真田幸村家臣の末裔・兵藤伊織は、徳川にまつろわぬ化外の民が住むという「葉隠谷」でカクゴという青年に出会い、惨殺されることによって転生する怨身忍者「零鬼」誕生のきっかけを作る。
いわゆるスターシステムによって『覚悟のススメ』や『エクゾスカル零』の登場人物をまったく別の役柄で配置し、「まつろわぬ民と絶対的支配者の闘争」と宿命に導かれし7人の怨身忍者の集結を描く『衛府の七忍』もついに最新第3巻。
今回は山の民(零鬼)、女たちの苦界(震鬼)、北国の民(雪鬼)に続いて、『覚悟のススメ』でも最強のラスボスだった“現人鬼”波裸羅(ハララ)が第2巻後半より続投。
“狂ほしく愉快”なイベントを経て、当初の徳川サイドから晴れて第4の怨身忍者に認定される。
そして本巻後半の舞台は遠く海を隔てた琉球(沖縄)が舞台。
史実でも隣国・薩摩に搾取されてきた琉球は本作でさらに苛烈を極め、「石曼子」こと島津の暴政にあえぐとともに、なんと大阪で自刃したはずの豊臣秀頼が落ちのびて、こちらも琉球の民を人とも思わぬ扱い。
いずれにせよ憎き内地人に立ち向かうのが今回の「霹鬼(ヒャッキー)」こと猛丸(タケル)。
猛丸もまた、今までの怨身忍者とはまったく異なる出自と驚異の超能力を持つが、単行本の時点では豊臣の忠臣と心を通わせる場面もあって、琉球の民を虫けらほどにもかえりみない秀頼を見ればどうにも不穏な予感しかない。
いずれにせよ残るは2人いや二忍! どんな怨身忍者が出てくるのか、著者お得意の壮大なストーリーもあわせて楽しみである。
あとは破夢子や毒魔愚郎が出てくるのかも少しだけ気になりますね。
<文・富士見大>
「怨身忍者」と言われたら「嵐、見参!!」と返す変身時代劇ファンの編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わり、最近作は「東映ヒーローMAX Vol.54」、『「ウルトラマン超解析」大怪獣激闘ヒストリー!』。間もなく発売の『仮面ライダーゴースト公式完全読本』にも参加しています。