『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』第1巻
森田崇(画) モーリス・ルブラン(原) 小学館クリエイティブ \600+税
1911年8月22日、フランス人画家ルイ・ベローはスケッチのために名画「モナ・リザ」が公開されているルーヴル美術館のサロン・カレを訪れた。しかし、「モナ・リザ」があるはずの場所には額縁を固定するための釘が残されているだけだった。
そう、「モナ・リザ」は前日8月21日の夜のうちに盗難にあっていたのだ!
偶然の一致とは不思議なもので、2004年8月22日にはノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクが描いた「叫び」と「マドンナ」が、所蔵のオスロ美術館から盗難に遭っている。
2004年の事件は強盗だったが、1911年の「モナ・リザ」事件は目撃者すらいないあざやかな盗みっぷりであった。
フィクションの世界でここまで華麗な盗みをやってのける男と言えば、やはりアルセーヌ・ルパン。
掲載誌を「イブニング」から「ヒーローズ」に移して、森田崇がモーリス・ルブランの原作を忠実に描く『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』では、ベル・エポック(美しき時代)と呼ばれる20世紀初頭のフランスを舞台に、怪盗紳士ルパンが変幻自在の変装術と大胆不敵なテクニックで様々なお宝を盗んでのける。第1巻は戯曲『ルパンの冒険』を原作とするもので、ルパンとロシア少女ソニア・クリスチノーフとのロマンスも描かれている。
ちなみに「モナ・リザ」も「叫び」「マドンナ」も、事件発生から2年後に発見され、今もルーヴル美術館で人々の目を楽しませている。
<文・富士見大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。