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『雑草たちよ 大志を抱け』 池辺葵 【日刊マンガガイド】

2017/03/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『雑草たちよ 大志を抱け』


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『雑草たちよ 大志を抱け』
池辺葵 祥伝社 ¥680+税
(2017年2月8日発売)


『繕い裁つ人』『プリンセスメゾン』の池辺葵の最新刊。

太眉に悩むがんちゃん、がんちゃんを毎朝迎えにくる幼なじみのひーちゃん、ちびっこいのに妙に老成したピコ……など、地方都市に生きる女子高生たちのなにげなくもかけがえのない日々が綴られてゆく。

地味で平凡な女子にとって、人生とは往々にしてハードなものだが、本作の主人公・がんちゃんも、じつは密かに思いを寄せていた男の子にほかの女の子への恋心をほのめかされて……。

報われない思いやコンプレックスだらけの自分にいやおうなく直面し、「素直になったら恥かくだけや。私は鋼鉄のバリアで自分の心を守るんや」といっていた彼女が「くさったりしないでせいいっぱい努力しようと思ったんだー」と話すクラスメイトを見て、不器用ながらも眉毛を整えたり、ひたむきに変わろうとする姿がまぶしすぎる!

そんな一見「朴訥としたいい人」に見えるがんちゃんにも、じつは意外な過去ゆえの意外な一面があって。飄々と見えるピコもひーちゃんも、だれもがそれぞれせつないものを抱えていて、それでも、だからこそ真摯に人と関わろうともがく彼女たちの姿に心ゆさぶられる。

「私の心は誰にも渡したくないな」とつぶやくがんちゃんにピコの母がかける「愛を交わした瞬間を胸に生きていくことだってできるのよ」という言葉がまたぐっとくる。

いずれは泡みたいに消えてしまうものでも、この時この瞬間、たしかに心がつながったという記憶や自分を救ってくれた言葉があれば、これからもずっとくさらずに前を向いて生きてゆける。

迷える思春期だけでなく、人生の迷子になった大人の背中も、そっと押してくれる1冊だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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