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【インタビュー】金城宗幸×荒木光『僕たちがやりました』 先のことは何も考えてなかった!?  行き当たりばったりなノリで「僕たちがつくりました」!!

2017/04/06


このマンガは、ギャグ、シリアス?

――単行本で読むと、すごくスピード感があるんですよね。

金城 それ、よういわれるんですよ。

――各巻の引きがすばらしくて、次巻が気になります。

金城 それは意識しました。とにかく単行本を売りたいと思っていたので、次を買ってもらえるようなつくりにしていこう、と話していたんです。

――いろいろな漫画家の方にインタビューをしていますが、最近は「単行本単位での打ち合わせ」が多いみたいですね。

金城 そうですね。僕らもそれでやってて、やりたいシーンをどこに入れるか、ってのをメインに考えてます。1巻のつくりなんかは、まさにそうですね。読者に「なんやこのマンガ!?」って思わせたと。

――ってことは、ある程度先までストーリーを想定していたんですよね?

金城 すんません、なんも考えてなかったです(笑)。

――えーっ!?

金城 いや、ホンマですって。さっきもいったとおり、最初はギャグをやるつもりだったんですから。そこから「荒木さんがやるからエロを入れよう」となって、好きな女の子とセックスしたい、ってのを描きたいな、と。さらに担当さんが「高校生がテロをやるようなマンガはどう?」と提案してくれて、それから荒木さんとはお互いに古谷実先生のファンなので、古谷先生の『シガテラ』や『ヒミズ』の路線も考えて。そうやって「じゃあこういうのももっと描いてよ」ってのをやっていくうちに、梅宮さんも出てきた。

荒木 クラウディア・トルネイド。

このノリと勢い……古谷実先生のファンだからこその1コマ。

このノリと勢い……古谷実先生のファンだからこその1コマ。

金城 そう、クラウディア・トルネイド(笑)。お互いがノっていくグルーブ感みたいなモノを僕は連載中に感じていましたけどね。

――ギャグ部分って、原作の段階ではどこまで考えるんですか?

金城 みんなで打ち合わせして考えるんですよ、「次どないしよ?」って。僕が話のスジを考えてきて、それを叩き台にして「ここ、もっとボケれるよね」っていいながらみんなで考える。

荒木 大喜利みたいなノリですよね。

――『ゾンビートルズ』(6巻第55話)、超いいッスね。

トビオと蓮子のデート中の1コマ。こんなところにもおもしろさが盛りこんじゃってます!!

トビオと蓮子のデート中の1コマ。こんなところにもおもしろさが盛りこんじゃってます!!

金城 え、そこ?(笑)

――4人でオノ・ヨーコを食っちまうんだろうなぁ、って。

金城 わははははは(笑)。

荒木 いや、ジョン・レノンだけは守るんですよ。ゾンビになったオノ・ヨーコが「うあー」とかいいながら、でも生前の記憶があってジョン・レノンだけは守る。

金城 ああ、そっちやったんだ(笑)。

――じゃあネタ出しは毎回4人(金城先生、荒木先生、担当編集2人)で?

荒木 そうですね。僕は作画が追いつかなくなってきて、最後のほうは参加できませんでしたけど。

金城 僕は基本的にはギャグマンガやと思ってるんですよ、このマンガは。人は死ぬけど。だから読者の反応を見ると「思ったよりシリアスに読んでるんだな」と、ちょっと困ってました。「これギャグやから笑とけ、笑とけ」って。

――どこか具体的に例示できます?

荒木 銅線を盗むネタじゃないッスか?

金城 そうそう。ラスト付近で、銅線を盗む話がテレビから流れてくるんですけど、こんなんギャグで入れたんですよ。

荒木 わかりやすいように「おっととっと」とか書いたんですけどね(笑)。

――塀の内側にJUMPする系のギャグですね。

金城 それです。でも読者の反応を見ると「これは次の展開の伏線に違いない」みたいな感想が多くて。ちゃうねん、このマンガもう終わんねん、て(笑)。

――「シリアス展開を引き立たせるためのギャグ」だと思っている読者は多いと思いますよ。

金城 逆、逆。ふざけたらいいんですよ。「どれがホンマにやりたいねん」と思われるようなとこが、荒木さんの作風にもあると思うんですよ。

荒木 中途半端ってことッスか!?

金城 あ、すいません。そういう意味じゃなくて(笑)。シリアスだと思って読む人には「これギャグやで」、ギャグと思っている人には「それだけでもないで」って、そういうおもしろさはあると思うんですよ。『ヤンキー塾へ行く』を読んだときに、荒木さんもそういうふうにふざけたいタイプだと思ったので、気があいますね、と。

荒木 ああ、なるほど。そういうのはありますね。

――逃亡中のトビオが行き当たりばったりな行動をしている時には、「それでも行きつくところには着地するんだろうな。先を想定して描いているんだろうな」と思って読んでいたんですけど……。

金城 ……わはははは(笑)。

――先生、笑うところじゃないですよ(笑)。

金城 いや、何も考えずにやってましたから。どんなんやったっけ?

荒木 ドーナツを食べて、それからヤングさんが出てきて。

金城 まったく適当でしたね。

荒木 ヤングさんに関しては、担当さんがいきなり「イケメンのホームレスを出そう」といってきたんです。

金城 まず「なんで?」から入りますけどね、僕らも。でもまぁ、おもろいな、と。ヤングさんの着ているコートの背中に羽が生えてるじゃないですか、ガラで。「なんやこれ?」って思いましたもん。

逃亡中のトビオに救いの手を差し伸べるヤングさん。このあとトビオはとんでもないことになります(笑)

逃亡中のトビオに救いの手を差し伸べるヤングさん。このあとトビオはとんでもないことになります(笑)

荒木 あのへんは僕もノリで描きこみました。

金城 結果的にホームレスに人生を学ぶ、みたいな部分になりましたけど、全部あとづけですよ。

――性欲の対象として見られる気持ち、ですよね。

金城 そう。でもそんなん高校生の男子にはわかんないッスよ。

――恋愛感情なのか性欲なのか、案外区別がついてませんからね。大人になるまで。

金城 そうそう、わかんないですって。

荒木 僕は今でも区別ついてません。

金城 それは荒木さんだけや(笑)。

――シリアスに読まれることには抵抗があったりします?

金城 それは、とくに思いません。読んでもらえれば。

荒木 おもしろいと思ってくれれば、どう読んでいただいても。でも、あんまり批判はされたくないです(笑)。

金城 アンチがついてこそ、みたいな部分もあるから、そらぁもうしかたないことですよ。でも、普通に傷つきますからね。

荒木 他人の作品の批判はおもしろいですけどね。

金城 それいちばんアカンやつやんか。ニヤニヤしながら読むんやろ(笑)。今俺が話にオチつけよう思った方向と逆いったで。

取材・構成:加山竜司

■次回予告
『僕たちがやりました』を構成するおもしろさや、リアルな登場人物像の作り方。さらにはまさかの『僕たちがやりました2』の情報まで!? お楽しみに!!


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