このマンガは、ギャグ、シリアス?
――単行本で読むと、すごくスピード感があるんですよね。
金城 それ、よういわれるんですよ。
――各巻の引きがすばらしくて、次巻が気になります。
金城 それは意識しました。とにかく単行本を売りたいと思っていたので、次を買ってもらえるようなつくりにしていこう、と話していたんです。
――いろいろな漫画家の方にインタビューをしていますが、最近は「単行本単位での打ち合わせ」が多いみたいですね。
金城 そうですね。僕らもそれでやってて、やりたいシーンをどこに入れるか、ってのをメインに考えてます。1巻のつくりなんかは、まさにそうですね。読者に「なんやこのマンガ!?」って思わせたと。
――ってことは、ある程度先までストーリーを想定していたんですよね?
金城 すんません、なんも考えてなかったです(笑)。
――えーっ!?
金城 いや、ホンマですって。さっきもいったとおり、最初はギャグをやるつもりだったんですから。そこから「荒木さんがやるからエロを入れよう」となって、好きな女の子とセックスしたい、ってのを描きたいな、と。さらに担当さんが「高校生がテロをやるようなマンガはどう?」と提案してくれて、それから荒木さんとはお互いに古谷実先生のファンなので、古谷先生の『シガテラ』や『ヒミズ』の路線も考えて。そうやって「じゃあこういうのももっと描いてよ」ってのをやっていくうちに、梅宮さんも出てきた。
荒木 クラウディア・トルネイド。
金城 そう、クラウディア・トルネイド(笑)。お互いがノっていくグルーブ感みたいなモノを僕は連載中に感じていましたけどね。
――ギャグ部分って、原作の段階ではどこまで考えるんですか?
金城 みんなで打ち合わせして考えるんですよ、「次どないしよ?」って。僕が話のスジを考えてきて、それを叩き台にして「ここ、もっとボケれるよね」っていいながらみんなで考える。
荒木 大喜利みたいなノリですよね。
――『ゾンビートルズ』(6巻第55話)、超いいッスね。
金城 え、そこ?(笑)
――4人でオノ・ヨーコを食っちまうんだろうなぁ、って。
金城 わははははは(笑)。
荒木 いや、ジョン・レノンだけは守るんですよ。ゾンビになったオノ・ヨーコが「うあー」とかいいながら、でも生前の記憶があってジョン・レノンだけは守る。
金城 ああ、そっちやったんだ(笑)。
――じゃあネタ出しは毎回4人(金城先生、荒木先生、担当編集2人)で?
荒木 そうですね。僕は作画が追いつかなくなってきて、最後のほうは参加できませんでしたけど。
金城 僕は基本的にはギャグマンガやと思ってるんですよ、このマンガは。人は死ぬけど。だから読者の反応を見ると「思ったよりシリアスに読んでるんだな」と、ちょっと困ってました。「これギャグやから笑とけ、笑とけ」って。
――どこか具体的に例示できます?
荒木 銅線を盗むネタじゃないッスか?
金城 そうそう。ラスト付近で、銅線を盗む話がテレビから流れてくるんですけど、こんなんギャグで入れたんですよ。
荒木 わかりやすいように「おっととっと」とか書いたんですけどね(笑)。
――塀の内側にJUMPする系のギャグですね。
金城 それです。でも読者の反応を見ると「これは次の展開の伏線に違いない」みたいな感想が多くて。ちゃうねん、このマンガもう終わんねん、て(笑)。
――「シリアス展開を引き立たせるためのギャグ」だと思っている読者は多いと思いますよ。
金城 逆、逆。ふざけたらいいんですよ。「どれがホンマにやりたいねん」と思われるようなとこが、荒木さんの作風にもあると思うんですよ。
荒木 中途半端ってことッスか!?
金城 あ、すいません。そういう意味じゃなくて(笑)。シリアスだと思って読む人には「これギャグやで」、ギャグと思っている人には「それだけでもないで」って、そういうおもしろさはあると思うんですよ。『ヤンキー塾へ行く』を読んだときに、荒木さんもそういうふうにふざけたいタイプだと思ったので、気があいますね、と。
荒木 ああ、なるほど。そういうのはありますね。
――逃亡中のトビオが行き当たりばったりな行動をしている時には、「それでも行きつくところには着地するんだろうな。先を想定して描いているんだろうな」と思って読んでいたんですけど……。
金城 ……わはははは(笑)。
――先生、笑うところじゃないですよ(笑)。
金城 いや、何も考えずにやってましたから。どんなんやったっけ?
荒木 ドーナツを食べて、それからヤングさんが出てきて。
金城 まったく適当でしたね。
荒木 ヤングさんに関しては、担当さんがいきなり「イケメンのホームレスを出そう」といってきたんです。
金城 まず「なんで?」から入りますけどね、僕らも。でもまぁ、おもろいな、と。ヤングさんの着ているコートの背中に羽が生えてるじゃないですか、ガラで。「なんやこれ?」って思いましたもん。
荒木 あのへんは僕もノリで描きこみました。
金城 結果的にホームレスに人生を学ぶ、みたいな部分になりましたけど、全部あとづけですよ。
――性欲の対象として見られる気持ち、ですよね。
金城 そう。でもそんなん高校生の男子にはわかんないッスよ。
――恋愛感情なのか性欲なのか、案外区別がついてませんからね。大人になるまで。
金城 そうそう、わかんないですって。
荒木 僕は今でも区別ついてません。
金城 それは荒木さんだけや(笑)。
――シリアスに読まれることには抵抗があったりします?
金城 それは、とくに思いません。読んでもらえれば。
荒木 おもしろいと思ってくれれば、どう読んでいただいても。でも、あんまり批判はされたくないです(笑)。
金城 アンチがついてこそ、みたいな部分もあるから、そらぁもうしかたないことですよ。でも、普通に傷つきますからね。
荒木 他人の作品の批判はおもしろいですけどね。
金城 それいちばんアカンやつやんか。ニヤニヤしながら読むんやろ(笑)。今俺が話にオチつけよう思った方向と逆いったで。
取材・構成:加山竜司
■次回予告
『僕たちがやりました』を構成するおもしろさや、リアルな登場人物像の作り方。さらにはまさかの『僕たちがやりました2』の情報まで!? お楽しみに!!
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