村への想いとは
──なるほど。ぶしつけな質問ではありますが、ご自身の幼少期は村やそれを選んだ両親の犠牲になったという思いはあります?
高田 村にいようと一般にいようと、基本「生まれた子どもは親の実験台になるようなものだ」と思っているので、特に犠牲になったとは思わないですね。
──うーん、それはたしかに。「カルト村」はたしかに特殊な話ではあるんですけど、他人事と思って読んでたら、自分が普通だと思って育った家も、もしかしてそれに近いいびつさを抱えていたかもしれない…とハッと気付かされる。そこがよくあるコミックエッセイとは異なる、ドキュメンタリーな視点を感じます。ちなみに現在、ご家族との交流はあるんでしょうか?
高田 今でもたまに遊びにいきますよ。新しくできた近場のおいしいお店を教えてもらっていっしょに食べにいったり、私たちが見つけたおもしろいお店に連れていったり。妹はお嫁に行ったので結婚式以来、ほとんど会えてませんが、母とは毎日連絡を取り合っているようです。
──村を出てたことで、家族との関係性の変化はありました?
高田 村では親と会う日を「親元ミーティング」といって、年に数回会えたのですが、村を出てからの同居は「長い親元ミーティング」みたいな感覚でしたね。長く同居してみると、相手のいろいろな面が見えてくるといった変化はありましたが、自分が両親の子供であり、妹の姉であるという関係性は一人暮らしをするまで変化はしませんでした。
──ご家族とカルト村について話されることはあります?
高田 普通にありますよ! 「あっ、これ村のプリンの味に似てない?」「そういえば村で食べた鶏の首肉、こっちで売ってないんだけど、あれってどこで買えるの?」「お父さんがさー、村でミドリガメ飼ってたじゃん?」みたいに、普通に会話に出てきます。家族間のいちばん大きな共通の話題ですし、「あの頃はああだったね」「あれって子どもの間だと、こんなふうにいわれていたけど、大人の間ではじつはこういう話で……」とか、普通の思い出話みたいに話していますね。
──本シリーズを発表したことで、村から何らかの反応やアクセスはありました?
高田 直接はありませんが、親のところにはあったようです。
──そうですか……。連載サイトの高田さんの近況からは、四季折々の風景や食を楽しみ、ふさおさんとあちこち旅に出かけたり、豊かで平凡な暮らしを謳歌されている様子が伺えます。それこそ、カルト村にいた頃からは想像できないことだと思うのですが、高田さんのなかで「人間かくあるべし」みたいな思いはありますか?
高田 いや、特にはありませんね。
──作中では、高田さんが子どもの頃、同じ村の会ったこともないオジサンと結婚する村の女性を見て、「自分は結婚しないし、子どもも作らない」と決意されるシーンも出てきますが、そんな気持ちが変わったのは、成長による自然な変化なんでしょうか。あるいは一般に出て、いろんな結婚なり家族のあり方を見て、変わった部分もある?
高田 他人がどう暮らしていようと変わるような意思ではないので、今、ふさおさんと暮らしているのは成長したということだと思います。
──現在の高田さんにとって、ふさおさんの存在の大きさが伺えます。カルト村シリーズは本作で完結とのことですが、新たにふさおさんとの日々をマンガに描かれたりする予定はあります?
高田 結婚した頃の詳細を描く予定は今のところないのですが、文春の『コミックエッセイルーム』で新作を描く予定で、そこに、ふさおさんも登場するとは思います。
──それは楽しみです! 今回、自身の体験をマンガに描くという体験を通して、ご自身のなかであらためて気づいたことや、変わったことはありますか?
高田 自分の過去とか体験したことを、やや客観的に捉えられるようになったかなとは思いますが、それ以外の変化は特にないですね。自分が経験したことをただ描いただけの作品で、伝えたいことが特にあるわけではないし、一度世に出したものなので、人によって色々な読み方もされるでしょうが、私自身それでいいと思っています。少しでも暇つぶしになれば幸いですし、あとは、ふさおさんのかわいさが伝わればうれしいですね。
ーーありがとうございました!
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取材・構成:井口啓子
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