「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、TVアニメ『有頂天家族2』
現在、アニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』が絶賛公開中の小説家・森見登美彦によるファンタジー小説『有頂天家族』の第2期が4月からTOKYO MXほかにて大好評放送中だ。
桓武天皇が王城の位置を定めてから、1200年。
京都には、人間とともに、狸たちが暮らしていた。狸は天狗に学び、人間に化け、そして時々、狸鍋にされたりしている……。
小説『有頂天家族』シリーズは、そんな現代を生きる「毛玉」たちの姿を、「阿呆の血を受け継ぐ」下鴨四兄弟を中心に描く、家族ものであり、妖怪ものであり、そして森見登美彦お得意の京都ものである。
現在放送中の『有頂天家族2』は、そのアニメ版第2弾。原作の『有頂天家族 二代目の帰朝』を映像化した作品にあたる。
しかしながら、この作品を映像化する、というのはなかなかの無理難題だったはずだ。なんといっても森見登美彦の魅力といえば、そのユーモラスな語り口にある。この「語り口」「文体」を映像にするという困難をアニメ版はみごとに成功している。
久米田康治のキャラクターデザインのもと、柔らかなタッチで描かれるキャラクターたちや、暖かく、そしてディテール豊かな背景美術を実際に見た読者なら、まさにこれは森見登美彦の目が見た、狸たちの目が見た、あの京都だ。あの『有頂天家族』だ、と思うはずだ。
さて、前作では、哀れにも狸鍋となって果てた父の最期にまつわる謎が描かれたが、今度は天狗の話である。
主人公・矢三郎たちの先生である老いぼれエロ天狗・赤玉先生。先生には「戦争」とまでいわれるほどの壮絶な親子げんかをして別れた二代目がいた。その二代目の突如の帰還により、天狗親子は一瞬即発の状態に。
一方、街には「人間の身にして狸を化かしにかかる謎の怪人物」が現れ、ライバルの夷川(えびすがわ)家もまたなにごとかたくらんでる様子。
迫る天狗の戦いがどのように映像化されるか楽しみだが、ほかにも長男・矢一郎の結婚や、三男・矢三郎と元婚約者・海星(かいせい)の関係のゆくえなど、見どころは盛りだくさん。
狸と天狗の物語、面白きことは良きことなり!
TVアニメ『有頂天家族2』を観たあとに……
今回、TVアニメ『有頂天家族2』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ作品を紹介しちゃいますよっ。
『有頂天家族』 第1巻
森見登美彦(作) 岡田祐(画) 久米田康治(キャラクター原案) 幻冬舎 ¥619+税
(2013年9月24日発売)
狸の頭領たる偽右衛門だった父、下鴨総一郎は、金曜日倶楽部の手にかかり、狸鍋となって世を去った。偉大なる父から「阿呆の血」を受け継いだ下鴨四兄弟は、京都を舞台に宿敵・夷川家との対決を続けるなか、やがて父の死をめぐる謎に近づいていく。
原作小説1冊目をアニメ化した第1期を、岡田祐が全4冊でコミカライズ。
第1期を観ていないという方は、まずは本書から手にとってみてはどうだろう。
『有頂天家族』のほかに、このマンガもおすすめ!
『大日本天狗党絵詞』 第1巻
黒田硫黄 講談社 ¥667+税
(2008年10月23日発売)
黒田硫黄が現代に生きる天狗たちを描いた本作は、『有頂天家族』の源流となった作品のひとつである。
原作者・森見登美彦はインタビューで、「狸と人間の関係だけでは書けてなかった。『大日本天狗党絵詞』という漫画を読んで「天狗だ!」と思ったんですよ。人間、狸、天狗。この三つの階層が京都にあるという設定にすれば他にない話になるはず、これでイケると。」と語っている。(『有頂天家族公式読本』より)
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas