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【日刊マンガガイド】『健康で文化的な最低限度の生活』第1巻 柏木ハルコ

2014/09/08


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『健康で文化的な最低限度の生活』第1巻
柏木ハルコ 小学館 \552+税
(2014年8月29日発売)


いぬ』『ブラブラバンバン』『花園メリーゴーランド』『鬼虫』等々、マニアックな性からディープな民俗学まで、異色テーマを独自の視点で掘り下げてきた作者が、正攻法のマンガ文体で取り組んだ“職業もの”マンガということにまずビックリした最新作。

主人公は、公務員として新卒採用されたとたんに生活保護の担当にまわされ、いきなり110人ぶんの受給者を受け持つことになった女性。
作品の基本フレームは、そんな彼女が職業上のさまざまな困難に直面しながら成長していく……という、よくあるタイプのものと思われるが、この第1巻の段階からして、凡百の“職業もの”にない、ずっしりしたヘヴィ級の読みごたえがあるのは、この職業が向かいあう問題そのものに、テーマとしての「解決」がまったくないからだろう。

「死ぬ死ぬ」と言い続けて周囲が慣れたあたりで本当に自殺してしまう人。「アンタさえいなければ」と母が娘に呪いをかけ続ける母子家庭。周囲からの「がんばれ」が逆効果になる人。そして「不正受給」……っぽい人。
前向きな主人公がそんな受給者たちに巻き込まれて右往左往するさまは、ときにユーモアも交える作者の驚異的な構成力(マンガ力)と語り口のおかげでおもしろく読めるが、エンターテインメントとして“読ませる”ぶん、読んだ直後からボディブローのように何かが効いてくる。たぶん、そのあたりがこのマンガの真骨頂だ。

巻末の「謝辞」にズラっと並んでいる、作者がおそらく本作のために取材したと思われる救護施設やNPO法人などのリストも圧巻。最近の職業マンガによくある、「監修者」を付けて表面的な情報を吸い込んでいくスタイルじゃないところが逆に頼もしい。
……やはりこれは、キャリアを通して、一筋縄ではいかないタイプの「おもしろい」をマンガに昇華させてきた作者ならではの“異色作”なのかもしれない。

<文・大西祥平>
マンガ評論家、ライター、マンガ原作者。著書に『小池一夫伝説』(洋泉社)、シリーズ監修に『ジョージ秋山捨てがたき選集』(青林工藝舎)など。「映画秘宝」(洋泉社)誌ほかで連載中。

単行本情報

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