『ホスピめし 2nd season』第2巻
野崎ふみこ 双葉社 \620+税
(2014年7月17日発売)
管理栄養士という職業、よく耳にするようになったけれど、その仕事内容はあまり知られていないかもしれない。
簡単にいえば、食の立場から健康管理や医療に関わる栄養学のプロフェッショナルである。
本作のヒロイン、小西麦子は、総合病院に勤務し、入院患者の食事内容と栄養の管理、外来患者の栄養相談を行っている。相対する患者はさまざまで、ニキビに悩む男子高校生もいれば、食事内容が命にかかわる糖尿病患者も。
「健康のために正しい食生活を」という正論はだれもがわかっているけれど、それが難しいのは周知のこと。「食べたいものをガマンしてまで長生きしたいと思わない」と、開きなおる人にお説教するのは簡単だが、それが自分の立場だったらどうだろう?
いやはや、管理栄養士とはたいへんな仕事である。
麦子は、そうしたなかで正論だけを押しつけることなく、患者が納得する食事のあり方をともに模索する。
それは嗜好の問題だけではない。「食べること」がうまくいかないのは、心理的な環境に原因があることも多いのだ。
個々の事情に寄り添いながら、彼女が何より大切にするのは、「よりよく食べたい=よりよく生きたい」と感じられる状況を取り戻すことである。
本巻のなかでも、とりわけ涙なしには読めなかったのが、末期ガンに冒された女性と、その夫のエピソード。
食が進まなくなった彼女に、夫はできるかぎり好きなものを食べてもらいたいと願う。しかし、好物のメニューを用意しても、彼女の反応は薄い。その謎は、意外なところにあって……。
「おいしい」と思いながら食べることができる、その幸せとありがたみを、ひしひし感じる作品である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」